注目論文:高齢者におけるRSウイルスとインフルエンザウイルス感染症の比較:7シーズンにわたる死亡率と罹患率の解析

呼吸器内科
フランスの大学病院における7シーズンの解析から、75歳以上の高齢者においてRSウイルス感染症はインフルエンザと同等の死亡率を示すものの、肺炎や入院、ICU入室率が高いことが示されました。
Respiratory Syncytial Virus vs Influenza Virus Infection: Mortality and Morbidity Comparison Over 7 Epidemic Seasons in an Elderly Population
高齢者におけるRSウイルスとインフルエンザウイルス感染症:7シーズンにわたる死亡率と罹患率の比較
Recto CG, Fourati S, Khellaf M, Pawlotsky JM, De Prost N, Diakonoff H, Donadio C, Pouga L, de Tymowski C, Kassasseya C.
J Infect Dis. 2024 Nov 15;230(5):1130-1138.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38574192/
背景:
RSウイルス感染症は最近のワクチン開発により注目を集めていますが、高齢者では依然として診断が見逃されています。本研究の主要評価項目は30日後の全死因死亡率の比較とし、副次評価項目として臨床症状、肺炎の発症率、入院率、ICU入室率を比較しました。


研究デザイン:
フランスの大学病院で実施された後ろ向き単施設研究で、7シーズンにわたり75歳以上の患者558名(RSウイルス125名、インフルエンザ433名、年齢中央値84.8歳)を対象としました。


結果:
RSウイルス感染患者では喘鳴や呼吸困難などの呼吸器症状が多く、インフルエンザ患者では発熱、倦怠感、筋肉痛などの全身症状が多く認められました。RSウイルス群では、肺炎(28.8% vs 17.2%, P = .004)、入院(83.2% vs 70%, P = .003)、ICU入室(7.2% vs 3.0%, P = .034)の割合が高く、在院日数も長期化(中央値 [四分位範囲]、9日 [2-16] vs 5日 [0-12]; P = .002)していました。30日後の死亡率は両群で同等でした(9.6% vs 9.7%, P = .973)。これまでで最大規模の75歳以上のRSウイルス感染症の詳細な解析により、RSウイルスはインフルエンザと同等の死亡率を示すものの、肺炎、入院、ICU入室率が高く、入院期間も延長することが明らかとなりました。