注目論文:米国における成人の呼吸器ウイルスワクチン接種状況(2024年秋期)

呼吸器内科
米国の全国調査データより、2024-25シーズンにおける成人のインフルエンザ、COVID-19、RSウイルスワクチン(RSVワクチン)の接種状況が報告されました。いずれのワクチンも接種率は40%未満にとどまっていますが、未接種者の35-41%が接種を検討していることから、医療機関による積極的な推奨が重要と考えられます。
Influenza, COVID-19, and Respiratory Syncytial Virus Vaccination Coverage Among Adults - United States, Fall 2024
米国における成人のインフルエンザ、COVID-19、RSVワクチン接種率 - 2024年秋期
Kriss JL, Black CL, Razzaghi H, Meghani M, Tippins A, Santibanez TA, Stokley S, Chatham-Stephens K, Dowling NF, Peacock G, Singleton JA.
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2024 Nov 21;73(46):1044-1051.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39570786/
背景:
予防接種諮問委員会(ACIP)は、6ヶ月以上の全ての人(18歳以上の成人を含む)に対して、インフルエンザとCOVID-19の年次接種を推奨しています。また、75歳以上の成人、および60-74歳で重症RSV感染症のリスクが高い成人に対して、RSVワクチンの生涯1回接種を推奨しています。


研究デザイン:
米国の18歳以上の成人を対象とした携帯電話によるランダムデジット・ダイヤル調査(National Immunization Survey-Adult COVID Module)のデータを用いて、インフルエンザ、COVID-19、RSVワクチンの接種状況をモニタリングしました。


結果:
2024年11月9日時点で、18歳以上の成人のうち、インフルエンザワクチン接種率は34.7%、COVID-19ワクチン接種率は17.9%でした。RSVワクチンについては、75歳以上で39.7%、重症化リスクのある60-74歳で31.6%が接種を受けていました。接種率は地域や人口統計学的特性により異なり、特に若年成人や健康保険未加入者で低値でした。シーズン早期の推定では多くの成人が呼吸器ウイルス感染症から十分な防御を得られていない一方で、未接種者の約35-41%がインフルエンザやCOVID-19ワクチンの接種を検討しており、75歳以上では40%がRSVワクチン接種を検討していることが示されました。医療提供者と予防接種プログラムは、呼吸器ウイルスシーズンのピークに向けて、アウトリーチ活動の拡大とワクチン接種の推進により接種率を向上させる余地があります。これらのデータは、接種率の低い集団の特定とワクチン接種パターンの理解に役立ち、予防接種活動の計画、実施、評価の指針となることが期待されます。