注目論文:生物学的製剤で治療された重症喘息患者における臨床的寛解達成率とその定義・関連因子

呼吸器内科
重症喘息患者における臨床的寛解の定義は研究間で大きく異なり、寛解達成率にも影響を与えることが示されました。3要素定義(経口ステロイド使用、増悪、症状負荷)では38%、4要素定義(肺機能を追加)では30%の患者が寛解を達成しました。肺機能低下、症状悪化、長期罹患、経口ステロイド使用などの呼吸器因子に加えて、うつ病や肥満などの併存症が寛解達成の重要な障壁となっていました。
Clinical remission attainment, definitions, and correlates among patients with severe asthma treated with biologics: a systematic review and meta-analysis
生物学的製剤で治療された重症喘息患者における臨床的寛解の達成、定義、および関連因子:システマティックレビューとメタ解析
Shackleford A, Heaney LG, Redmond C, McDowell PJ, Busby J
Lancet Respir Med. 2024 Nov 13
https://doi.org/10.1016/S2213-2600(24)00293-5
背景:
臨床的寛解は重症喘息における重要な治療目標として注目されていますが、研究集団、定義、方法の違いにより報告される達成率は様々です。本研究は、生物学的製剤で治療された重症喘息患者における臨床的寛解の達成率、定義、関連因子についてシステマティックレビューとメタ解析を行うことを目的としました。


研究デザイン:
Web of Science、Embase、MEDLINEのデータベースを用いて、"asthma"と"remission"をキーワードとして2024年6月13日までに発表された論文を検索し、生物学的製剤で治療された重症喘息患者における臨床的寛解を報告した研究を対象としました。臨床的寛解の定義として、経口ステロイド使用・増悪・症状負荷の3要素定義と、これに肺機能を加えた4要素定義を設定し、DerSimonian-Lairdランダム効果モデルを用いて寛解達成率とその関連因子を解析しました。


結果:
3,014件の論文を特定し、最終的に25研究(28の解析)を対象としました。68の寛解定義(48の独自定義)が確認され、特に症状と肺機能に関して研究間でコンセンサスはほとんど見られませんでした。寛解達成率は3要素定義で38%(95%信頼区間:29-47%)、4要素定義で30%(27-34%)でした。複数の呼吸器因子(FEV1低値、症状悪化、長期罹患、経口ステロイド使用)が低い寛解率と関連していました。また、うつ病(オッズ比0.38)や肥満(オッズ比0.41)などの併存症も重要な非呼吸器系の障壁として同定されました。本研究により、早期の効果的な治療介入と、より広範な治療可能な特徴へのアプローチが予後改善に重要である可能性が示唆されました。