注目論文:MAC症の治療中に同一菌種内で遺伝的に異なる株が分離される頻度

呼吸器内科
MAC症の治療経過中に同一菌種であっても遺伝的に異なる株が分離されることがあり、その実態が明らかになりました。本研究では約25%の患者で治療開始後に遺伝的に異なる株が分離されており、これは治療効果判定や治療戦略に影響を与える可能性があります。
Isolation of genetically distinct strains within the same species during treatment of MAC pulmonary disease
MAC肺疾患の治療中における同一菌種内での遺伝的に異なる株の分離
Lee J, Park SJ, Kim S, Lee HN, Sung H, Shim TS, Jo KW
Chest. 2024 Oct 17:S0012-3692(24)05312-1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39426718/ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39426718/
背景:
Mycobacterium avium complex (MAC)肺疾患の治療中に同一菌種内で遺伝的に異なる株が分離されることに関する研究は限られています。本研究では、MAC肺疾患治療経過中に治療前の分離株と比較して、治療中の分離株から同一菌種内で遺伝的に異なる株が同定される頻度を調査しました。


研究デザイン:
韓国の三次医療機関において、2019年11月から2022年10月までの期間に1ヶ月以上MAC肺疾患の治療を受けた患者から、治療前および治療中の臨床分離株を経時的に収集しました。多座位配列タイピング(MLST)による遺伝子型解析を用いて、治療中の分離株が治療前の分離株と比較して遺伝的に異なる株であるかを判定しました。


結果:
登録された327名の患者のうち、198名の患者で治療中の分離株が治療前の分離株と同一菌種であることが確認されました。198名の治療期間中央値は14.4ヶ月(四分位範囲:12.1-16.9ヶ月)でした。これらの患者のうち、24.7%(49/198名、95%信頼区間:18.9-31.4)において、MLSTによる解析で治療中に少なくとも1回は治療前の分離株と遺伝的に異なる株が確認されました。これら49名の患者では、異なる株の出現時期、頻度、株の数に違いが見られました。本研究により、MAC肺疾患の治療開始後に同一菌種が分離された患者の約25%で、少なくとも1回は遺伝的に異なる株が同定されることが明らかとなり、これらの知見は治療効果判定や治療戦略に影響を与える可能性があります。