注目論文:予防行動とCOVID-19ワクチン接種の関連性:50歳以上の欧州住民の分析

呼吸器内科
COVID-19ワクチン接種への抵抗感は、予防医療への取り組み姿勢と密接に関連することが示されました。個人の予防行動と共に、その国の集団としての予防医療への取り組みがワクチン接種の受容に影響を与えるという知見は、新たなパンデミック対策を考える上で重要です。私も臨床現場で、インフルエンザワクチンを定期的に接種している患者さんはCOVID-19ワクチンにも前向きな印象を持っています。
Unraveling COVID-19 vaccine hesitancy in Europeans 50 and older through a lens of preventive practices
50歳以上の欧州住民におけるCOVID-19ワクチンへの躊躇:予防行動の視点からの分析
Delaruelle K, Lermytte E, Bockstal M, Vuolanto P, Bracke P.
Vaccine. 2024 Nov 5;43(Pt 2):126485.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39504684/
背景:
COVID-19パンデミックはワクチン接種への躊躇という課題を浮き彫りにし、研究者らはCOVID-19ワクチン接種意欲の決定要因について調査を進めてきました。本研究は「文化的健康資本」という理論的概念に基づき、個人レベルと社会的文脈の両面から予防行動の役割を包括的に検討した初めての研究です。


研究デザイン:
欧州25カ国に在住する50歳以上の18,454名を対象としたHealth, Ageing, and Retirement調査(SHARE)のデータを用いて、過去の予防行動への取り組みと国レベルでの予防行動の普及度が、COVID-19ワクチン接種の可能性に与える影響を分析しました。個人レベルと社会レベルの両方において、(1)過去のワクチン接種行動、(2)その他の医療関連行動、(3)生活習慣因子を分析対象としました。SHAREの縦断的デザインを活用し、これらの関係性の時間的順序性を考慮に入れました。


結果:
個人レベルでは、ほぼすべての予防行動がCOVID-19ワクチン接種意欲と有意に関連していました。COVID-19流行前にインフルエンザワクチンを接種していた人、小児期にワクチン接種を受けていた人、生涯を通じて定期的な歯科検診や血圧測定を受けていた人、そしてリスクの高い生活習慣を持たない人ほど、COVID-19ワクチンを受け入れる傾向が高いことが示されました。ただし、飲酒については有意な関連は認められませんでした。社会レベルでは、パンデミック前のインフルエンザワクチン接種率が高い国ほど、住民のCOVID-19ワクチン接種意欲が高いことが示されました。予防行動への積極的な参加とワクチン接種キャンペーンの効果的な実施は、(制度的な)文化的健康資本の発展に寄与し、最終的にCOVID-19ワクチン接種への意欲を高めることが示唆されました。