注目論文:AI活用による気胸検出と放射線科報告時間の短縮効果

呼吸器内科
放射線科における気胸検出のためのAIアルゴリズムが、臨床現場でどのように診断精度と報告速度に寄与するかを評価した興味深い研究です。本研究では、中~重度の気胸を検出する際のAIツールの性能が優れており、放射線科医の報告時間を46%短縮したことが報告されており、臨床的に有用な知見が示されています。AIの早期警告により迅速な対応が可能となり、特に治療可能な重篤疾患への影響が期待されます。
Real-World Performance of Pneumothorax-Detecting Artificial Intelligence Algorithm and its Impact on Radiologist Reporting Times
リアルワールドにおける気胸検出AIアルゴリズムの性能と放射線科報告時間への影響
Hunter JG, Bera K, Shah N, Bukhari SMA, Marshall C, Caovan D, Rosipko B, Gupta A.
Acad Radiol. 2024 Oct 29(24)00775-X.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39477746/
背景:
放射線分野におけるAIアルゴリズムは、緊急性のある所見の検出に大きな関心を集めているが、実臨床におけるAIの効果については未解明な点が多い。本研究は、FDA認可の気胸(PTx)検出AIツールが、ある学術医療センターでの入院患者胸部X線検査において、診断精度および報告までの時間に与える影響を調査した。


研究デザイン:
この後ろ向き研究では、AI統合システム導入後に収集された成人入院患者の単一正面胸部X線(CXR)27,397例を対象とした(期間:2020年8月~2021年4月)。そのうち、12,728件はAI統合システム内で取得され、残りの14,669件はシステム外で取得されたものであった。最終的な放射線科レポートを基準として、気胸検出におけるAIアルゴリズムの受信者操作特性曲線(ROC)分析を行った。また、AI警告システムが放射線科医の報告時間に与える影響をウィルコクソン順位和検定で評価した。


結果:
AIツールのROC曲線下面積(AUC)は0.78、感度は0.60、特異度は0.97であった。中~重度の気胸を対象とした場合、AUCは0.93、感度は0.89、特異度は0.96に向上した。AI統合システムによる気胸確定診断例の報告時間の中央値は、システム未使用時と比較して46%短縮され(100分 vs. 186分、p < 0.001)、迅速な診断支援が可能となった。臨床現場における気胸検出および警告を行うAI統合システムは、中~重度の気胸に対して優れたAUCを示し、放射線科医の報告時間を大幅に短縮することで、治療可能な重要疾患に対する迅速な臨床対応を促進する可能性が示唆された。