注目論文:インフルエンザワクチンの有症・無症状感染に対する効果(2022-2023シーズン)

呼吸器内科
2022-2023年のインフルエンザシーズンにおいて、インフルエンザワクチンは有症状感染の予防に一定の効果が確認されましたが、無症状感染に対しては効果が限定的であることが示されました。この結果は、インフルエンザワクチンが感染そのものよりも、感染後の発症予防に寄与している可能性を示唆しています。無症状感染に対する評価まで行っているところに新規性があると考えられます。
Influenza Vaccine Effectiveness Against Illness and Asymptomatic Infection in 2022-2023: A Prospective Cohort Study
2022-2023年におけるインフルエンザワクチンの有症・無症状感染に対する効果:前向きコホート研究
White EB, Grant L, Mak J, et al.
Clin Infect Dis. 2024 Oct 24.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39446477/
背景:
過去のインフルエンザワクチンの無症状感染に対する有効性(VE)の推定は、血清抗体価の変動を基にしており、結果が広範で偏りが生じる可能性がありました。本研究では、2022-2023年のインフルエンザシーズンにおけるインフルエンザワクチンの有症・無症状感染に対する有効性を評価しました。


研究デザイン:
HEROES-RECOVERコホートに属する高リスク職業従事者を対象に、アメリカ国内7拠点で前向きに調査を実施しました。参加者は毎週、症状報告と鼻腔スワブによるRT-PCR検査を受け、検査結果は有症状(症状あり)または無症状に分類されました。各拠点でのインフルエンザシーズン開始日(2022年9-10月)から感染日、試験中止日、またはシーズン終了(2023年5月)までの人日を観察し、予防効果はCox比例ハザード回帰で算出しました。


結果:
合計3785名中269名(7.1%)がインフルエンザ陽性と確認され、その98%がインフルエンザA型でした。このうち75%(201名)が有症状感染でした。有症状感染の発生率は、ワクチン接種群と非接種群でそれぞれ10万日あたり23.7件と33.2件であり、ワクチン有効率は38%(95%信頼区間: 15%-55%)でした。一方、無症状感染の発生率は、接種群と非接種群でそれぞれ10万日あたり8.0件と11.6件であり、ワクチン有効率は13%(95%信頼区間: -47%-49%)にとどまりました。インフルエンザワクチンは有症状感染の予防に一定の効果があるものの、無症状感染の予防効果は低いことが示唆されました。