注目論文:免疫不全患者におけるSARS-CoV-2感染の抗ウイルス併用療法

呼吸器内科
免疫不全患者に対するSARS-CoV-2感染治療として、抗ウイルス薬や抗体療法の併用療法が報告され、特に血液悪性腫瘍やB細胞枯渇のある患者に有効である可能性が示されています。当院でも時にこのような症例を経験し治療に難渋します。長期化あるいは再発する感染において高い効果と良好な耐容性が確認されましたが、最適な組み合わせや治療期間は現時点のエビデンスでは明確には定義できない状況です。進行予防や長期的なウイルス排出抑制における併用療法の有用性について、さらなる検証が期待されます。本邦においても「免疫不全者におけるCOVID-19の臨床対応指針案」が最近公開されています。
(https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2518-lab/12889-covid19-87.html)
Antiviral combination treatment strategies for SARS-CoV-2 infection in immunocompromised patients
免疫不全患者におけるSARS-CoV-2感染に対する抗ウイルス併用治療戦略
Sepulcri C, Bartalucci C, Mikulska M.
Curr Opin Infect Dis. 2024 Oct 24.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39446756/
レビューの目的:
本レビューの目的は、免疫不全患者におけるSARS-CoV-2の治療において、抗ウイルス薬および/または抗体療法の併用レジメンの使用に関する現在の証拠を報告することです。


最近の知見:
文献検索により、単一症例報告を除外した24の論文が特定されました。これらは主に血液悪性腫瘍および/またはB細胞枯渇を有する患者を対象としていました。データは、併用治療の投与時期と理由に基づいて分類されました。すなわち、重症COVID-19への進行を予防するための早期治療と、遷延性または再発性感染症の治療です。治療を受けた患者集団、治療期間、併用治療の構成について記述しました。新しい治療選択肢について簡潔に言及し、血液悪性腫瘍患者におけるCOVID-19感染症の管理のためのアルゴリズムを提案しました。


まとめ:
併用治療は、免疫不全宿主における遷延性/再発性SARS-CoV-2感染症の治療に対して、効果的(73-100%)で忍容性の高い(徐脈、肝毒性、好中球減少症の報告は5%未満)戦略であると考えられます。ただし、現在入手可能な証拠に基づいて、その最適な構成と期間を定義することはできません。重症化/持続的なウイルス排出のリスクが高い免疫不全患者に対する早期治療戦略としての併用治療の役割については、単剤療法との比較からさらなる証拠が必要です。ただし、以前のウイルス変異株に対しては、抗ウイルス薬とmAbs(モノクローナル抗体)の併用で高い有効性が報告されています。