注目論文:高齢者施設におけるRSV感染の負担

呼吸器内科
高齢者施設におけるRSウイルス感染の疾病負荷についての系統的レビューが報告されました。この研究では、RSウイルス感染が高齢者施設の入居者において高い罹患率と死亡率を示し、慢性疾患を有する患者にとって特に深刻なリスクとなることが明らかになっています。RSウイルスに対する予防策の必要性が示唆されており、今後の疫学研究やサーベイランスが求められます。
Burden of Respiratory Syncytial Virus (RSV) Infection Among Adults in Nursing and Care Homes: A Systematic Review

高齢者施設における成人のRSウイルス感染の負担:系統的レビュー
Osei-Yeboah R, Amankwah S, Begier E, Adedze M, Nyanzu F, Appiah P, Ansah JOB, Campbell H, Sato R, Jodar L, Gessner BD, Nair H.
Influenza Other Respir Viruses. 2024 Sep;18(9)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/irv.70008
背景:
高齢者施設に入居する高齢者は、RSウイルス感染による重症化や入院、死亡のリスクが高いことが知られています。本研究は、これらの施設におけるRSウイルスの負担についてデータを収集し、RSウイルスによる入院や致死率のリスク要因を特定することを目的としました。


研究デザイン:
本研究のプロトコルはPROSPERO(CRD42022371908)に登録されており、MEDLINE、EMBASE、およびGlobal Healthデータベースを用いて2000年から2023年までに発表された文献を対象に検索を行いました。高齢者施設に入居し介護を必要とする高齢者を対象とし、RSV感染に関する観察研究および実験研究のデータを抽出しました。


結果:
18,690件の文献をスクリーニングし、32件を全文レビュー、20件を最終的に選定しました。対象となった高齢者施設入居者は42名から1459名で、平均年齢は67.6歳から85歳でした。RSウイルス感染の発症率は6.7%から47.6%、年間発症率は0.5%から14%でした。致死率は7.7%から23.1%と報告され、RSウイルス陽性の急性呼吸器感染症(ARI)の年間発症率は、100,000人あたり4582(95%信頼区間: 3259-6264)および4785(95%信頼区間: 2258-10,141)であることが確認されました。また、RSウイルス陽性の下気道感染症の年間発症率は、100,000人あたり3040(95%信頼区間: 1986-4454)でした。RSウイルス-ARIによる入院率は、年間600(95%信頼区間: 190-10,000)から1104(95%信頼区間: 350-1930)人年あたりの範囲でした。報告された基礎疾患として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全、虚血性心疾患、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、腎機能障害、脳血管障害、悪性腫瘍、認知症、およびCharlson併存疾患指数が6.5以上の患者が含まれていました。高齢者施設におけるRSウイルス感染に関するデータは限られており、その多くが異質性を持っていますが、高い罹患率、頻繁な入院、高い死亡率が報告されています。これらのハイリスク集団に対して、予防的介入(ワクチン接種など)の導入が考慮されるべきです。全国的な疫学研究や高齢者施設を基盤としたウイルス病原体サーベイランスが、RSウイルスの疾病負荷をより正確に評価するために必要です。