注目論文:重症好酸球性喘息に対する半年ごとのデペモキマブ投与

呼吸器内科
重症好酸球性喘息患者に対して、新しい治療オプションとなるデペモキマブの有効性と安全性が示されました。この薬剤はインターロイキン-5に対する結合親和性を高めた超長時間作用型の生物学的製剤であり、6ヶ月ごとの投与が可能です。今回の研究結果は、重症喘息の管理における治療選択肢の幅を広げるものであり、特に好酸球性表現型を持つ患者において有用であることが期待されます。
Twice-Yearly Depemokimab in Severe Asthma with an Eosinophilic Phenotype
重症好酸球性喘息に対する半年ごとのデペモキマブ投与
Jackson DJ, Wechsler ME, Jackson DJ, Bernstein D, Korn S, Pfeffer PE, Chen R, Saito J, de Luíz Martinez G, Dymek L, Jacques L, Bird N, Schalkwijk S, Smith D, Howarth P, Pavord ID; SWIFT-1 and SWIFT-2 Investigators.
N Engl J Med. 2024 Sep 9.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2406673
背景:
デペモキマブは、インターロイキン-5に対する結合親和性を強化した超長時間作用型の生物学的製剤であり、6ヶ月間隔での投与が可能とされています。重症好酸球性喘息患者において、これが有効な治療選択肢となり得るかどうかが今回の試験で評価されました。


研究デザイン:
本研究は、2つの第3相ランダム化プラセボ対照試験(SWIFT-1およびSWIFT-2)として実施されました。対象は過去12ヶ月で好酸球数が300個/μL以上、またはスクリーニング時に150個/μL以上の好酸球数を有し、中等量以上の吸入ステロイドを使用しても増悪を繰り返す重症喘息患者です。患者は2:1の割合で、デペモキマブ(100 mg皮下注、0週および26週に投与)またはプラセボを標準治療と共に投与されました。主要評価項目は52週時点での年換算増悪率で、二次評価項目として、St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアのベースラインからの変化、1秒量(FEV1)、および喘息症状の評価が含まれました。


結果:
2つの試験を合わせて792名が無作為化され、うち762名が解析対象となりました。デペモキマブを受けた患者は502名、プラセボを受けた患者は260名でした。年換算増悪率は、SWIFT-1試験でデペモキマブ群が0.46(95%信頼区間[CI], 0.36–0.58)、プラセボ群が1.11(95% CI, 0.86–1.43)(率比0.42; 95% CI, 0.30–0.59; P<0.001)であり、SWIFT-2試験ではデペモキマブ群が0.56(95% CI, 0.44–0.70)、プラセボ群が1.08(95% CI, 0.83–1.41)(率比0.52; 95% CI, 0.36–0.73; P<0.001)と、いずれも有意に減少しました。一方、SGRQスコアのベースラインからの変化に有意差は見られなかったため、以降の二次評価項目については統計的推論が行われませんでした。両試験において、デペモキマブ群とプラセボ群の間で有害事象の発生割合に大きな差はありませんでした。デペモキマブは、重症好酸球性喘息患者における年換算増悪率を有意に低下させました。半年ごとの投与でこの効果が得られることから、治療負担の軽減にも寄与することが期待されます。