注目論文:60歳以上の成人におけるRSウイルスワクチンの有効性
呼吸器内科
2023年に初めて承認されたRSウイルスワクチンの、60歳以上の成人におけるリアルワールドでの有効性が報告されました。今回の研究により、RSV関連の入院や救急外来受診に対するワクチンの予防効果が実証され、ワクチン政策の策定に重要な知見が提供されました。当科でも、特に高齢者、呼吸器疾患患者に対する呼吸器感染症予防の観点から、RSウイルスワクチンの活用を積極的に推奨しています。
Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysis
60歳以上の成人におけるRSV関連の入院および救急外来受診に対するRSVワクチンの有効性(米国、2023年10月〜2024年3月):陰性対照デザイン解析
Payne AB, Watts JA, Mitchell PK, et al.
Lancet. 2024 Oct 19;404(10462):1547-1559.
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0140673624017380
Payne AB, Watts JA, Mitchell PK, et al.
Lancet. 2024 Oct 19;404(10462):1547-1559.
背景:
2023年に初めて推奨されたRSウイルスワクチンは、臨床試験において下気道疾患に対する効果が確認されていましたが、現実世界におけるデータは限られていました。本研究では、臨床試験のエビデンスギャップを埋め、ワクチン政策の策定を支援するため、60歳以上の成人におけるRSV関連の入院および救急外来受診に対するワクチンの有効性を評価しました。
研究デザイン:
2023年10月1日から2024年3月31日まで、米国の8つの州の電子健康記録ネットワークを用いて、RSV様疾患で入院または救急外来を受診し、RSウイルス検査を受けた60歳以上の成人を対象に陰性対照デザイン解析を実施しました。ワクチン接種状況は、電子健康記録、州および都市の予防接種登録、ならびに一部のサイトでは医療請求データから取得しました。年齢、人種・民族、性別、カレンダー日、社会的脆弱性指数、非呼吸器系基礎疾患の数、呼吸器系基礎疾患の有無、地理的地域などを調整した上で、RSウイルス陽性の症例患者とRSウイルス陰性の対照患者のワクチン接種率を比較し、ワクチンの有効性を推定しました。
結果:
免疫抑制状態でない60歳以上の成人28,271例のRSV様疾患による入院において、RSV関連の入院に対するワクチンの有効性は80%(95% CI 71-85)であり、重症疾患(ICU入院や死亡)に対しても81%(52-92)の有効性を示しました。免疫抑制状態にある8,435例に対しても、RSV関連の入院に対するワクチンの有効性は73%(48-85)で確認されました。また、救急外来を受診した36,521例のうち、RSウイルス関連の救急外来受診に対するワクチンの有効性は77%(70-83)でした。年齢層や製品タイプにかかわらず、これらの有効性は一貫していました。本研究は、RSウイルスワクチンが2023-24年シーズンにおいて、60歳以上の成人に対するRSウイルス関連の入院および救急外来受診を有効に予防できることを示しました。これはRSウイルスワクチンが承認された最初のシーズンであり、リアルワールドのデータとして重要な意義を持ちます。
