医学生と研修医の先生への言葉:志を立てよう

医学教育
医学生や研修医の先生方は、まずは少しずつで良いので、自分自身の志を立てていきましょう。志とは、「世の中のために大切な何かを成し遂げよう」という決意です。

誰にでも簡単に見つけられるものではありませんが、志を持つことが、医師としての歩みを導いてくれます。

志を立てる際には、例えば「地域医療に貢献し、開業医として地元に根ざした診療を行う」や「教育病院で臨床に従事しつつ、次世代の医師の育成に力を注ぐ」など、自分が直感的に興味を引かれる大きな方向性を考えてみると良いです。志が見えてくると、自分がどんなスキルを身につけるべきか、どんな経験を積むべきか、どんなキャリアパスを歩むべきかがより明確になります。

一方で、志は必ずしもすぐに確立できるものではありません。私自身も、学生時代から様々な悩みを抱えましたが、その中で経験したことや出会った人々から多くの影響を受けました。志を立てるためには、自己との対話、内省、そして悩みを通じた自己発見が大切です。医師として働きながら、日々の臨床や患者さんとの触れ合いを通じて、徐々に自分の志が見えてくることも少なくないです。ですから、焦らず、自分自身と向き合いながら、その志を探していってください。

私の例で言えば、学生時代には多くの書籍に触れながら、全人的医療、医学教育、そして臨床研究に強く惹かれました。それがきっかけで、「患者を全人的に診る医師でありたい」「医学教育に貢献したい」「新しい知見を研究で生み出したい」という志を持ちました。しかし、それも一朝一夕に確立したものではなく、現場での実際の経験や人との出会いがその過程を支えてくれたのです。例えば、呼吸器内科を専門に選んだ理由も、急性期から慢性期にわたる幅広い全人的医療が可能である点に強い共感を覚えたからです。そして、呼吸器感染症をサブスペシャリティとして選んだのも、その道の専門家との出会いや臨床での経験が私を導いてくれた結果でした。

志を持つことで、私たちは歩む過程で出会う人や経験の中に意義を見出し、さらなる成長への道筋が見えてきます。志とは、ある種の羅針盤のようなものであり、それを持つことで進むべき道が自然と明確になります。そして、時にはその道が困難であっても、志があなたを支えてくれます。

ですので、医学生や若手医師の皆さんには、自分自身の志をぜひ見つけてほしいと思います。そしてその志を少しずつ育てていくことで、あなたにとってかけがえのない経験や出会いがきっと待っているはずです。自分の志に導かれた医師としての歩みが、皆さんの人生を豊かにし、医療においても大きな貢献を果たせることを私は信じています。