注目論文:COVID-19感染後の冠動脈疾患リスク

呼吸器内科
COVID-19感染後最大3年間、心臓発作や脳卒中の強力なリスク要因となる可能性があることが示されました。COVID-19感染者は重症度に応じて心血管イベントリスクが2-3倍になっています。


COVID-19 Is a Coronary Artery Disease Risk Equivalent and Exhibits a Genetic Interaction With ABO Blood Type
COVID-19は冠動脈疾患と同等のリスクを持ち、ABO血液型との遺伝的相互作用を示す
Hilser JR, Spencer NJ, Afshari K, Gilliland FD, Hu H, Deb A, Lusis AJ, Wilson Tang WH, Hartiala JA, Hazen SL, Allayee H.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2024 Oct 9. https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/ATVBAHA.124.321001

背景:
COVID-19は、心筋梗塞、脳卒中、全死亡(あらゆる原因による死亡)を含む主要な有害心血管イベント(MACE)の急性リスクと関連していることが知られています。しかし、COVID-19後に心血管疾患およびMACEのリスクが増加する期間や、その根底にある要因は明らかになっていません。

方法: 英国バイオバンクのデータを使用して、SARS-CoV-2感染のPCR陽性(n=8062)またはCOVID-19に関する国際疾病分類第10版(ICD-10)コードが病院ベースで付与されたCOVID-19症例(n=1943)を特定しました。これらは2020年2月1日から2020年12月31日までの期間に確認されました。対照群としては、同じ期間に英国バイオバンクから集められた人口対照(n=217,730)および傾向スコアでマッチングされた対照(n=38,860)を用いました。比例ハザードモデルを用いて、COVID-19がMACEの長期リスク(1000日以上)および冠動脈疾患リスクと同等であるかを評価しました。さらに、COVID-19が遺伝的要因と相互作用してMACEやその構成要素に影響を与えるかを検討しました。

結果: COVID-19症例では、すべての重症度でMACEのリスクが増加していました(HR, 2.09 [95% CI, 1.94-2.25]; P<0.0005)、特にCOVID-19で入院した症例でそのリスクはさらに高くなっていました(HR, 3.85 [95% CI, 3.51-4.24]; P<0.0005)。COVID-19による入院は、冠動脈疾患リスクと同等であり、心血管疾患の既往歴がない症例では、心血管疾患の既往がある患者よりも新たなMACEリスクがさらに高くなっていました(HR, 1.21 [95% CI, 1.08-1.37]; P<0.005)。COVID-19による入院とABO遺伝子座との間に有意な遺伝的相互作用が認められ(Pinteraction=0.01)、非O型の血液型の被験者では血栓イベントのリスクが増加していました(HR, 1.65 [95% CI, 1.29-2.09]; P=4.8×10^-5)、O型の被験者ではそのリスクは有意ではありませんでした(HR, 0.96 [95% CI, 0.66-1.39]; P=0.82)。

結論: COVID-19による入院は冠動脈疾患リスクと同等であり、特に非O型の血液型では急性心筋梗塞や脳卒中のリスクが増加していました。この結果は重要な臨床的意義を持ち、血栓イベントに対する遺伝子と病原体の相互作用の一例として初めて報告されたものと考えられます。