ちょっとためになる話9:腰部脊柱管狭窄症2

post36_1.jpg 背骨には「脊柱管」と呼ばれる神経の通り道があります。腰の脊柱管が狭くなったものが「腰部脊柱管狭窄」です。イラストを見てください。前方には椎間板、後方には椎弓や椎間関節が見えていますね。真ん中の三角形の隙間が「脊柱管」です。脊柱管狭窄症にはいろいろなタイプがありますが、一番多いのはこのイラストのように黄色靱帯が厚くなって(肥厚)脊柱管を狭めてしまうタイプです。

 腰部脊柱管狭窄症は高齢者に多い病気です。歩くと足がしびれて座りたくなります。そして、休むとまた歩けるようになります。これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。腰を伸ばすと脊柱管が狭くなり、座ったり腰をかがめると脊柱管が少し広くなります。それで休むと症状が良くなり、また歩けるようになるというわけです。腰をかがめる姿勢、例えばスーパーでカートを押しているとき、自転車に乗っているときなどは症状が軽いのが特徴です。Sさんは漁をしているときは腰をかがめて網を引き上げているので、足が全くしびれなかったんですね。症状が進行すると歩ける距離が徐々に短くなり、ついには立ち上がっただけでしびれてくる、そして座ってもしびれがとれないようになってしまいます。そしてもっと進行すると、足に力が入らなくなったり(麻痺)、おしっこが出にくくなったり(排尿障害)します。

 症状が軽いうちは薬で様子を見ますが、症状が進行してきたら手術が必要になります。私たちは、手術用顕微鏡下で肥厚した靱帯を切除する拡大開窓術(かいそうじゅつ)という手術を行っています。そんなに難しい手術ではありませんので、しびれのために日常生活が不自由になったら(歩行距離にして100m程度)、手術を検討された方が良いかもしれませんね。

 写真はL4/5の拡大開窓術を行ったところです。※のところが除圧されています。
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このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療