慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis)

2014年2月に深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014が公表されました。2007年版以来、約7年ぶりの改訂です。

呼吸器内科領域の改訂内容として、今回、慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis)という概念が提唱されました。

本稿では、本邦の深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014に基づいて、慢性進行性肺アスペルギルス症についてまとめます。

概念

・慢性型の肺アスペルギルス症は、その病態から慢性型、急性型(侵襲型)、アレルギー型に大別される。慢性型は、肺の器質的病変にアスペルギルスが腐生することによって生じる。

・慢性肺アスペルギルス症(CPA:chronic pulmonary aspergillosis)は、以下に分類される。
(Clin Infect Dis. 2008;46(3):327-60.)

1:単純性肺アスペルギローマ(SPA: simple pulmonary aspergilloma) 結核性遺残空洞、気管支拡張症、肺嚢胞、肺線維症、塵肺、胸部外科手術後肺などの器質的肺病変に発症し、1個の空洞に真菌球を呈するもの。

2:慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA: chronic cavitary pulmonary aspergillosis)
肺に複数の空洞が存在し、周囲に炎症があり、菌球は合ってもなくても良い。
経過は遅いが、年単位の経過で空洞が拡大し、虚脱する。
病理学的に、組織侵襲を認めないもの。
(Clin Infect Dis 2003;37 Suppl3:S265-280)

3:慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA: chronic necrotizing pulmonary aspergillosis) 肺に結節やconsolidationがあり、空洞は合ってもなくても良い。 経過が比較的早く、進行性に肺が破壊される。 病理学的に、組織侵襲を認めるもの。(Medicine (Baltimore) 1982;61:109-124)

・後者2つの疾患(CCPAとCNPA)の臨床的鑑別は困難であり、治療に関しても明確な差異がないので、両者を統合した疾患群が、慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis)である。

CPPAの症状

・基本的には肺の基礎疾患を有する患者で、緩徐に進行し、増悪、寛解を繰り返す。

・1ヶ月以上続く咳嗽(78%)、喀痰(血痰、喀血など)、倦怠感(28%)、発熱(11%)、体重減少(94%)、呼吸困難(50%)などを認める。
(Clin Infect Dis. 2003;37 Suppl 3:S265.)

CPPAの検査所見

・CRPや赤沈などの炎症マーカーは、上昇することが多いが、CPPAに特異的なものではない。

・血清抗アスペルギルス沈降抗体が陽性になることが多い。ただし、罹病期間が短い場合や、寛解例では陰性になることもある。

・β-D glucanとガラクトマンナン抗原も陽性になる場合がある。
(Respirology. 2009;14(5):701.)
(Med Mycol. 2012;50(8):811-7. Epub 2012 May 9.)

・喀痰のアスペルギルス培養陽性(多くはA.fumicatus)は、10〜40%の患者でしか認めない。

(Chest. 2007;131(5):1435.)

*半数以上で、アスペルギルスIgE抗体が陽性となり、アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)を合併していない症例においても、Total IgEの軽度上昇を認める場合がある。

(Clin Infect Dis. 2003;37 Suppl 3:S265.)

CPPAの画像所見

・まず基礎として既存肺に嚢胞や空洞性病変が存在する。

・新たな空洞性陰影の出現、空洞性陰影の拡大、胸膜肥厚の進行、空洞壁の肥厚(空洞周囲浸潤影の拡大)、鏡面形成、真菌球様の陰影の増悪を認める。

(当院で経験したCPPAの画像所見。壁の厚い空洞の拡大を認める。)
慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis)

診断

慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis)

・上記のリスクファクターを有する患者で、1ヶ月以上続く呼吸器症状や全身症状、画像所見の増悪、一般抗菌薬や抗抗酸菌薬の投与には反応しない、炎症性マーカーの上昇があるなどで本症を疑う。

● 臨床診断
血清抗アスペルギルス抗体陽性、あるいは、呼吸器検体で病理学的にアスペルギルス検出(BALF検体、TBLBで菌糸確認など)

● 確定診断
臨床診断に加え、培養検査でアスペルギルス陽性

*高齢、全身状態不良で、気管支鏡検査が困難なケースも少なくない。
*非結核性抗酸菌症を同時に認めたり、一般細菌の混合感染を認める場合もある(→空洞内液面形成が起こる)ので注意する。

治療

・本邦のガイドラインでは、第一選択薬は、ミカファンギン(MCFG)とボリコナゾール(VRCZ)である。

1:初期治療:全身状態不良な場合は、入院で2週間以上

●ファンガード®(ミカファンギン) 150mg-300mg+生理食塩水100ml 1時間以上かけて 1日1回点滴静注

●ブイフェンド®(ボリコナゾール)
初日    6mg/kg/回 +生食100ml 2時間かけて 1日2回点滴静注
2日目以降 4mg/kg/回 90分かけて 1日2回点滴静注


*ブイフェンド静注用(ボリコナゾール注射薬)

・ボリコナゾール注射薬は1時間あたり3mg/kgを超えない速度で投与

・Ccr<30mL/分では禁忌、中等度の腎機能障害患者Ccr 30〜50mL/分では、治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与 

2:維持療法:ボリコナゾール(VRCZ)やイトリコナゾール(ITCZ)の経口薬で6ヶ月以上(病状、病態が安定していれば中止を検討)
ブイフェンド®(ボリコナゾール) 200mg/回(体重40kg以上のとき) 1日2回経口投与

*ブイフェンド錠(ボリコナゾール内服薬)

●注射薬からの切り替えではなく治療開始する場合

体重40kg以上の場合は、初日に1回300mgを1日2回、2日目以降は1回150mgまたは200mg。

体重40kg未満の場合は、初日に1回150mgを1日2回、2日目以降は1回100mgまたは200mg【重症例の用量など詳細は文献1を参照下さい】

慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis)

参考文献

1)深在性真菌症のガイドライン作成委員会.深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014. 協和企画 2014年 東京 2)David W Denning, MBBS, FRCP, FRCPath, FMedSci. Clinical manifestations and diagnosis of chronic pulmonary aspergillosis. Up To Date. last update 2013 Oct

* 注意
亀田総合病院、呼吸器内科で行っている診療の概要を示したものです。実際の診断・治療の判断は主治医が責任を持って行って下さい。