vol.66 医療現場の燃え尽き症候群(burnout)への対策とは?

2018年秋のAAHPM(米国ホスピス緩和ケア協会)の広報誌でtrauma surgeon(外傷を扱う外科医)から緩和ケアに関心が移った心境について米国の外傷外科医であるDr. Michael Weinstein(トマスジェファーソン大学)が語っている記事がふと目にとまりました。
この医師は自身の燃え尽きから重症の鬱病を患い、精神科病棟での壮絶な闘病を経て最近職場への復帰を果たしました。現在は医療現場におけるsupportive and compassionate groupの活動にも積極的に参加されているようです。勇気あるWeinstein医師は自身の闘病経験をNEJM(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)に投稿しています(以下)。英語も読みやすいのでぜひご一読を。

Weinstein医師は、自身の病気の回復にマインドフルネスが役だっていると語ります。当院でもマインドフルネス研修会を2012年から毎年数回シリーズで開催しています。絶え間なく患者ケアに追われる医療者の中には、すでに燃え尽きている人、あるいはその予備軍が相当の割合(米国の小児救急分野では7割!)存在するといわれます。この燃え尽きを防ぐ有効なツールの一つがマインドフルネスです。多忙な日常の中にも時には立ち止まり静かに呼吸のみに集中し自己の内面を見つめること。家族や友人など他者との関係性を見つめ、今ここに生かされている自分のいのちに感謝すること。これらにより私たちはシンプルに生きていることの基本に戻れます。
私たちはなぜ医療従事者を志したのでしょうか?今の皆さんの職場はスタッフ同士互いを思いやることができる職場になっていますか?患者さんやご家族の幸福のために日々働く私たち医療者自身の心がいつも穏やかで平安でありますように!Weinstein医師のこの勇気ある発言は私達が目指している方向が間違っていないことを知らせてくれています。マインドフルネスの文化が私達や皆さんの職場で少しずつ広がってほしいと願っています。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和