境界

エントリー

メンタルヘルス

キーワード

大うつ病性障害、適応障害、母子分離

post159.jpg

○今回のポートフォリオは専攻医3年、坂井先生の発表でした。
夫の仕事の都合もあり、縁もゆかりもない南房総に引っ越してきた30代の女性。発達障害の子どもを抱え、転居後から周りからサポートが得られず、気分の落ち込みがありました。抑うつ気分について大うつ病か適応障害か、どちらとも診断がはっきりしない中で、育児や環境の変化などが負担となっていた様子でした。その後継続診療を重ねる中で、適応障害の診断として子どもの療養先や本人への社会的なサポートなどの環境調整を多職種で密に連携して行うことで、徐々に症状が改善していった症例でした。

ディスカッションではメンタルヘルスのポートフォリオで重要となる診断についてDSM-VとICD-10では異なること、うつ病と適応障害の治療方針の違い、抑うつ気分についてPHQ-9などのスコアリングで経時的に評価を行うことの重要性といった点が話題にあがりました。

指導医の伊藤先生からは、家庭医が診療している"抑うつ"の患者では、臨床診断が曖昧となるような患者を多く治療していること、その中で医師が診断において患者をラベリングするときは、患者さんの健康に最も価値のある項目に分類することが大切である、というEBMの祖であるデイビッド・サケット医師の言葉からお話をいただきました。

発達障害の診療を行っており、また多職種での連携を取りやすい当院ならではのケアが提供できたケースであり、家庭医の診療や視点の幅広さを感じさせるポートフォリオでした。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学