前立腺全摘除術術後 尿失禁のPRP治療 初症例
2024年6月4日、亀田総合病院で1泊2日入院、PRP尿道括約筋注入療法の初症例を施行した報告になります。
前立腺全摘除術後尿失禁(Post Prostatectomy Incontinence: PPI)は前立腺全摘後に起こる合併症の一つですが、パット着用は日常生活においてQOLを損なうものとなります。近年、ロボット支援手術で全失禁になるような症例は少なくなってきたものの、一定の割合で術後尿失禁を認めます。
PPIの治療法は、内服治療、人口括約筋治療が保険診療として認められておりますが、骨盤底筋訓練、テスラ磁器刺激治療やレーザー治療または再生医療については本邦ではまだ、今後有効性や安全性を確認していく段階です。
PPIのPRP治療はScientific Reportsに2021年に報告され、92.9%の方に何らかの改善を認めたとインパクトのある論文です。1)歩くだけで半分以上尿失禁があるような方には不向きであることも示され、「チョイ漏れ」の治療にはうってつけだと感じ、導入に踏み切りました。
本邦では初めての導入と言うことで、有効性と安全性を検証する臨床試験として導入できました。治療経過がスムーズに行くと、一般病院でも治療として開始できるようになると思います。
今回は、65歳で2021年に腹腔鏡下前立腺全摘除術後の方です。普段の生活では漏れはないですが、小走りで尿漏れが少量あるためPRPを希望されました。
多い日は1日20gの尿失禁、VASスケールは5点。
1ヶ月毎に1度、計4回予定しています。
3回投与した後から、目に見えて変わってくるのではないかと予想しております。
良いご報告ができればと思います。
1)Lee PJ, et al. A novel management for post prostatectomy urinary incontinence: platelet-rich plasma urethral sphincter injection, scientific reports, 2021; 11:5371
このサイトの監修者
亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和
【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術