肩の痛み!"けんばん"の損傷


今回はスポーツ選手に限らず広く一般的に起こる「腱板(けんばん)」損傷についてお話しいたします。


肩の関節は上腕骨(ボールの形)と肩甲骨(受け皿の形)からなります。そして腱板とは、このボールの部分を受け皿の部分に引き寄せて肩の関節を安定化させるために働く小さな筋肉のことを言います。前方から肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の順でならんでいます。


それではこの腱板はどういった動作で傷つくのでしょうか?例えば重い荷物を高い棚に置こうともちあげたり、腕をのばして車の後部座席のかばんを取ろうとしたり、布団の上げ下ろしをするといった動作で痛めてしまうことが多くあります。また、手をついて転倒したり、肩を強く打ちつけたりしても痛めてしまいます。

こういったけががきっかけで腱板を痛めてしまうといくつか特徴的な症状がおこります。まず肩の外側が痛く感じます。特に夜間に痛みが出たり、朝痛みのために目が覚めたりします。また長時間脇を開いて荷物を持てなくなります。「痛てててー」と腕が下がってしまいます。こういう症状を英語でdrop arm sign(=腕が落ちてしまう徴候)といいます。

このように腱板を痛めてしまうとまずはリハビリにて症状を改善するように治療します。

不完全な損傷であったり、きわめて小さな損傷で症状が少ない方には肩甲骨周囲のトレーニングをしたり、日常生活動作の指導などを行い、痛みが出ないように注意します。それと同時に、腱板損傷後に起こりやすい拘縮肩(俗に「四十肩」などと呼ばれるようなもので肩関節の動きが悪くなります)を予防するために肩関節の可動域改善訓練を行います。

こういった保存的なリハビリであまり症状が改善しない方や、完全に腱板が断裂している方などは関節鏡で腱板を修復する手術も当院のスポーツ医学科で行っております。以前のように大きな傷を作ることなく数ミリから1cm程度の小さな傷から関節鏡を肩の中にいれ、テレビ画面を見ながら断裂した腱板を縫合しています。近年はこの関節鏡技術が大幅に進歩したために術後の成績がかなり良好で満足度も高いです。術後はリハビリをしっかり行い、2?3カ月で通常通りの日常生活、半年程度でハードなスポーツまで可能になる場合がほとんどです。

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スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法