vol.44 『集中治療医が重症患者となって初めてわかったこと』

『集中治療医が重症患者となって初めてわかったこと』(N Engl J Med 2017; 376:7-9)

集中治療室で働く医師が自らそこでケアを受ける重症患者(肝腫瘍が破裂し計26単位の輸血を要し、多臓器不全に至ったが、奇跡的に回復し職場復帰された)となった経験から得た気づき〜医療者とりわけ医師は患者が経験している苦しみを理解できていないこと、医療者らは患者を傷つけるような発言を知らずと日常的に発していること、患者のケアは断片的で部門同士連携が図れていないこと、など〜を書き綴っています。

私たち医療者は、正直な患者さんから発せられる同様の内容の話を日常的に聞いてはいますが、大半を聞き流しています。医療者はとかく無意識的に医療者の立場と患者の立場を区別してものを考えています。全く愚かなことですが、この医師の話のように、医療者であっても、いつでも患者側になりうること、そして患者側の立場で、普段、私達が提供している医療やケアそのものをそのうち自らが受けることを平素は忘れています。今私たちが提供している医療(ケア)は、患者となったときに受けたい医療(ケア)でしょうか?
誰しも完全な人は存在しませんし、人は過ちを日常的に犯す存在です。だからこそ、こうした体験談を時には読んで内省することが求められるのかもしれません。

(関根)

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和