vol.19 米国CDCが慢性疼痛患者へのオピオイドの長期使用は望ましくないと声明

米国CDCが慢性疼痛患者へのオピオイドの長期使用は望ましくないという声明を出したことが波紋を投げかけています。日本よりも一人あたりのオピオイド消費量が20倍ともいわれる米国ですが、その原因となっているのが、非がん慢性疼痛へのオピオイド長期使用です。以前からその是非については議論が分かれる難しいテーマです。(ちなみに私の米国時代の恩師は、非がん疼痛にもオピオイドを推進するリーダー的存在でしたが、最近その考えを変更したとおっしゃっていました。)現在米国では、年間16000件もの鎮痛薬の過量投与関連の死亡事故が発生しているといい、米国政府としては、これ以上、事態を悪化させるわけにはいかないという強い決意を示す必要があったのでしょう。ただ、現実的には、何万人か分かりませんが相当数のオピオイド治療中の慢性難治性疼痛患者(非がん)が存在し、急にその患者のオピオイド処方を中止することはできませんから、当事者である患者やその処方医は難しい判断を迫られています。疼痛専門家らは、NIHの報告を引用し、処方どおり使用した場合であればオピオイド依存の問題で困る状況に陥る患者は年間に5%程度と反論。この5%という数字が多いか少ないか皆さんどうでしょうか。日本では、痛みに我慢すべきでない、という掛け声の下、がん疼痛のみでなく、非がん疼痛にも難治性であればオピオイドを以前に比べて使用するようになってきました。しかしながら、米国では、これまでの過量投与の反動で、振り子が反対方向に戻ってきているのです。今後の日本における非がん疾患へのオピオイド長期使用については、全面的な推進ではなく、疼痛専門家によるいくつものチェックリストをクリアした症例に限定することが望ましいでしょう。

(文責:関根)

参考サイトはこちら

このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和