NCPR(日本版新生児蘇生法)受講報告

専攻医2年目の河野です。
12月に院内開催されたNCPR(日本版新生児蘇生法)講習会に参加しましたので、ご報告いたします。

日本では、周産期医療体制の整備が進み、ハイリスク分娩・ハイリスク新生児の出生が予測された場合、新生児科医、小児科医が分娩に立ち会う体制が確立しています。しかし、分娩においては予想外に赤ちゃんの状態が悪いこともあり、予期しない新生児仮死に対する初期対応は分娩に立ち会う全ての医療者が迅速かつ確実に行う必要があることからNCPRの普及事業が行われています。

今回の講習会は、NICU部長の佐藤先生を講師として、アシスタントのNICU看護師1名の他、受講生6名(医師2名、助産師3名、NICU看護師1名)で開催されました。講習会の流れとしては、まずプレテストで事前知識の確認を行い、続いて新生児蘇生に関する基礎知識のレクチャーと基本技術の習得、講習会後半にはケースシナリオという形で実践的なシミュレーションを行い、最後にポストテストを行なって、終了となりました。昼の12時から夕方6時までみっちりと新生児蘇生に関する知識・技術を学びました。

プレテストでも出題された1問を、NCPR公式テキストの巻末問題集からご紹介します。

Q:正期産児で「人工呼吸」を必要とする頻度で正しいのはどれか。
 A. 0.1% B. 1% C. 5% D. 10% E. 15%

この問題の解答は、C (5%)です。
5%というと20分娩に1例、当院のような年間600件近くの分娩を取り扱う施設とすると年間約30例となります。だいたい月に2-3例、1人の産科医が経験する頻度としては年に数回といったところでしょうか。私も半年間の産科ローテーション期間の中で、2例の人工呼吸が必要な症例を経験しました。

人工呼吸さえ確実にできれば、新生児仮死の児の90%は救命可能とされています。日頃からNCPRで行うようなシミュレーションを通して手技に慣れ、実際に臨床現場でそれを実践する、その繰り返しが非常に大切であると改めて感じました。


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講習会後半のケースシナリオで、NICU部長の佐藤先生が出題してくださったシナリオは、モニター異常なく出生しルーチンケアで速やかに呼吸状態が安定する児から、常位胎盤早期剥離適応で全身麻酔の超緊急帝王切開によって出生となった児まで、様々な状況の症例でした。私たちはリーダー役を中心して3人1チームで児の蘇生にあたりました。私たちがNCPRのアルゴリズムの中でどのような選択をするかによって児の状態が刻々と変化し、蘇生の判断にミスがあると児の状態が悪くなり、正しい選択をすると状態が改善する、という示唆に富んだシナリオで、非常に勉強になりました。最初はぎこちないチームワークでしたが、繰り返していく内に、お互いに声かけをしあいながらスムーズな蘇生を行うことができるようになっていったのが印象的でした。


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亀田総合病院の産婦人科専攻医プログラムでは、産婦人科専攻医でありながらNICUをローテーション可能なのが特長です。私も、昨年の1月から3月までの3ヶ月間、NICUに所属し、新生児医療に携わる経験をしました。コロナの状況もあり、これまでNCPRを受講できていませんでしたが、今回の講習会を通して改めて知識・技術の整理を行うことができました。今後とも、学んだことを実践し臨床に生かしていきたいと思います。開催に携わって下さった佐藤先生はじめとするスタッフの皆さま、ありがとうございました。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
産婦人科主任部長 大塚 伊佐夫

【専門分野】
婦人科悪性腫瘍