第25回遺伝性腫瘍学会

6月14日、15日に都内で開催された『第25回遺伝性(家族性)腫瘍学会』に産婦人科から松浦、田嶋の2人、そして当院からは乳腺科医師、看護師、遺伝カウンセラーが参加してきました。
25年の歴史を持つ家族性腫瘍学会は今回の学術集会以降、『遺伝性腫瘍学会』へと名称が変更になりました。
遺伝、腫瘍と聞くと、近年着目されている『がんゲノム医療』『Precision Medicine』を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実はちょっと違います。がんゲノム医療はがん細胞の遺伝子変異をターゲットにした検査、治療方法の開発、実臨床への応用ですが、遺伝性腫瘍は先天的(生まれたときから)に遺伝子変異(病的バリアント)をもっている人に発生した腫瘍のことです。
今回の学会のテーマは『がんゲノム新時代』であり、がんゲノムとオーバーラップすることもありますが、学会の対象疾患はあくまで遺伝性疾患であり、その予防や早期発見、治療方法の開発などについて議論される場です。対象となる遺伝性疾患としては、産婦人科関連では遺伝性乳癌卵巣癌症候群、やLynch症候群などが挙げられます。学会参加者も産婦人科医だけでなく、腫瘍内科、乳腺科、外科、小児科など多くの専門分野から、さらには臨床遺伝領域に携わる看護師や遺伝カウンセラーなどのコメディカルまで多くの職種が参加し、知識を深めるとともに、情報交換、議論を交わすことのできる場です。

今回は施設内臨床研究でもある遺伝性乳癌卵巣症候群を含む卵巣がんのリスクが高いと考えられるような方に対して行っている卵巣がんサーベイランス(卵巣がん検診)について発表しました。
卵巣がん検診は世界的にも推奨されている方法はありません。基本的に推奨されているのはリスク低減卵管卵巣摘出術(卵巣がん発症前に予防的に卵巣・卵管を切除する手術)です。
しかし、日本では遺伝性乳癌卵巣癌症候群は保険適応疾患ではないために、自費診療(当院の場合は70万円)となり、希望者に負担をかけてしまっている状況があります。遺伝子検査だけでも約30万円と高額です。そういった背景があるにも関わらず、希望者が遺伝子検査、手術ではなく、検診を望んでも、検診はしても意味がないと断られてしまうケースもあります。
当院のサテライトクリニックである亀田京橋クリニック(https://www.kameda-kyobashi.com/ja/index.html)では、2015年1月より卵巣がんハイリスク検診事業を開始し、4年間における実績を発表しました。
院内臨床研究として50名の方々に参加して頂き、1年ごとの骨盤MRI、6ヵ月ごとのエコー、腫瘍マーカー採血を行っています。幸いにも卵巣がんを発症した方はいませんが、その間に遺伝子検査や手術を受けるきっかけができたこともありました。他の卵巣疾患や腫瘍マーカーが上昇する場合は、保険診療として精査を追加することにより不要な手術は回避することができています。サーベイランスはただの検診ではなく、遺伝子検査を受けて変異が見つかった方、見つからなかった方、遺伝子検査を受けるかどうか考えている方、皆様にとってとても重要な選択肢であると考えています。協力者の方に感謝するとともに、今後も研鑽を重ね、さらなる診療内容改善にむけて努力していきたいと思います。

↓学会の幹事校で仕事中のM場先生(左、亀レジ卒)を捕まえて一緒にパシャリ!

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↓今回のブログ内容と全く関係ありませんが笑、6月産婦人科研修をがんばってもらった初期研修医の原田先生、最後の発表会では、子宮体癌の病理を中心に2症例発表してもらいましたが、今年1番、活発な議論が交わされた発表会になりました。そしてこだわりの原田コーヒー、最高に美味しかったです(*'∀')

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このサイトの監修者

亀田総合病院
産婦人科主任部長 大塚 伊佐夫

【専門分野】
婦人科悪性腫瘍