COVID-19の気管挿管

物品

  • 挿管チューブ(カフ上吸引付)
  • スタイレット
  • McGRATH®
  • ジャクソン-リース回路
  • 人工鼻
  • カプノメータ
  • 換気用フェイスマスク
  • リザーバーマスク
  • ヤンカー吸引管
  • カフシリンジ
  • クランプ鉗子
  • 飛沫防護具
  • 胃管
  • ガムエラスティックブジー
  • i-Gel®


ジャクソン-リース回路の組み方

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準備とブリーフィング

挿管の準備:"C O V I D"で確認する

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C: "Crash" Induction 迅速導入
Rapid Sequence Intubation (RSI)で行う。バッグ換気はしない。

O: Oxigenation
前酸素化の方法を計画し、チームで共有。

  • ガスはできる限り低流量で + 自発呼吸で3-5分かけて行う。
  • リザーバーマスク>ジャクソン-リースのマスクフィット>やむを得ない場合のみバッグ換気
  • マスクフィットは両手法+E-V gripでしっかり密着させる。
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※ E-Vクランプは下顎挙上の指と両親指で握り込むようにマスクを密着させる。下方向へ押し付けないように注意。

V: Videolaryngoscopy & Ventilator setting ビデオ喉頭鏡&人工呼吸器の準備

必ずビデオ喉頭鏡 (eg.McGRATH®)を使用する。

 人工呼吸器の準備
 人工呼吸器は初期設定をして、一度電源を落としておく(エアロゾル発生防止)
 挿管後、チューブに接続してから電源ON→「同患者」で運転開始(PB840使用時)

I: IV drug 薬剤
 <鎮静薬>

  • ケタミン 2mg/kg
  • プロポフォール1-2mg/kg

 <鎮痛薬>

  • フェンタニル2mcg/kg
    ※ボーラス時のフェンタニル誘発性咳嗽 fentanyl-induced cough に注意。鎮静薬の後に投与するか、使用を避ける。

 <筋弛緩薬>

  • ロクロニウム 1-1.2mg/kg

D: Droplet & Aerosol Protection 飛沫&エアロゾル防護

  • 必要最小限の人員で行う→役割を明確化すること
  • N95マスク+空気感染対策のPPE。
  • ジャクソンリース回路とマスクの間にフィルタ(人工鼻)を装着(上図)。
  • アクリルボックス・ビニル袋で防御


(図)アクリルボックスを使用した飛沫防御

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※アクリルボックスの使用は現在は推奨されていない(20.11/6 追記)
参考:Protective Barrier Enclosures Without Negative Pressure Used During the COVID-19 Pandemic May Increase Risk to Patients and Health Care Providers - Letter to Health Care Providers

(図)ビニル袋を使用した飛沫防御

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その他

  • 回路の付け外し時にはチューブをクランプ+人工呼吸器をOFF→装着後再開
  • 確認のレントゲンは可能なら2-3時間後に(エアロゾルを考慮)


挿管の手順

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1. ポジショニング
(1)スニッフィング・ポジション
麻酔を始める前にスニッフィング・ポジションになるよう枕を調整しておく。
※アクリルボックスを使用すると手技中の頭位調節は困難。準備が大事。
(2)ベッドの高さ
アクリルボックスの穴に自然に手が入る高さにベッドを調節。必要なら足台を。

2. 前酸素化
プラン通りの方法で前酸素化。できるだけ低流量ガスを心がける

3. 薬剤投与
鎮静薬(ケタミン/プロポフォール)→(±鎮痛薬)→筋弛緩薬(ロクロニウム)の順
エスラックス投与後1分以上待って喉頭展開。

4. 喉頭展開〜チューブ留置

5. 挿管の確認
カプノメータのEtCO2で確認する。聴診は省略できる。
 人工鼻付きのJ-L回路で換気して確認。
 ※バッグ換気は最小限の回数にするために「○回揉んで」と指示するとよい。
胸部レントゲン:待てるなら挿管から3時間程度おいて撮影。

6. 経鼻胃管の挿入
 筋弛緩が効いている間に挿入する。
 位置異常でリークする可能性あり。防護具を使用したまま行う。


★ブリーフィング/手技中に使えるアクションカード★
COVID-19 挿管準備チェックリスト
COVID-19 挿管手順確認カード

【もっとひといき】
Cook TM, El-Boghdadly K, McGuire B, McNarry AF, Patel A, Higgs A (2020), Consensus guidelines for managing the airway in patients with COVID-19: Guidelines from the Difficult Airway Society, the Association of Anaesthetists the Intensive Care Society, the Faculty of Intensive Care Medicine and the Royal College of Anaesthetists. Anaesthesia. https://doi.org/10.1111/anae.15054. [Google Scholar]

Canelli R, Connor CW, Gonzalez M, Nozari A, Ortega R.Barrier enclosure during endotracheal intubation. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMc2007589 Crossref, Medline, Google Scholar


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学