microbiology round

本日のmicrobiology roundはStreptococcus anginosusについて取り上げました。
症例は大動脈弁置換術後の60代男性です。数日の経過で増悪する腰痛、発熱、体動困難を主訴に救急搬送されました。脊柱叩打痛があり発熱もあることから化膿性椎体炎が疑われました。血液培養採取の上、MRIが施行され、第5腰椎と仙骨にDWIで高信号を認めました。化膿性椎体炎が最も考えられたため、患者の状態が良好だったことから起炎菌の同定を優先し、抗菌薬は投与せずに血液培養を待ったところ、2セット中2セット嫌気ボトルより連鎖様のGram陽性菌を認め、同菌による化膿性感染症と診断されました。5%ヒツジ血液寒天培地、チョコレート寒天培地を用い、好気培養に加えて炭酸ガス培養を行いました。認められたコロニーに対してMALDIバイオタイパーで同定を行ったところ、S. anginosusと同定されました。ラピッドID32ストレップアピでも同定を行い同様にS. anginosusでした。ペニシリンG MIC<0.06μg/mLと感性であることや、ペニシリンGで4週間治療し、同じく感性であったクリンダマイシン内服に変更し退院となりました。

■名前の由来、歴史
Strepto連鎖状の、coccus球菌、anginosus狭心症
1906年にAndrewesとHodrderによって発見されました。

■微生物学的特徴
S. anginosusは通性嫌気性菌でありGram染色ではGram陽性レンサ球菌を示します。
α、β、γ溶血様々な溶血性を示します。
至適発育温度は35-37℃で炭酸ガス要求性や栄養要求性が高く、嫌気条件下で発育が良いです。
コロニーは他のStreptpcoccus属に比較して24時間炭酸ガス培養において0.5mm以下のサイズの小さい白-灰白色となります。平板培地上で特有のカラメル臭を示します。
S. constellatus、S. intermediusと合わせてS. anginosus groupと言われます。

■臨床像
S. anginosusは口腔内、消化管、泌尿生殖器の常在菌です。
口腔内・頭頸部感染、脳膿瘍といった中枢神経感染、菌血症、感染性心内膜炎、腹腔内感染、肺炎、膿胸、皮膚軟部組織感染、骨髄炎などを起こします。
化膿性椎体炎の起炎菌としては比較的稀です。
他のViridans groupと比べて化膿性感染症、膿瘍形成の傾向があります。

■感受性、治療
ペニシリン、セファロスポリンへの感受性は良好です。
ほとんどの場合でペニシリンGのMICは0.125以下で、中間、耐性は2%以下です。
一部の菌でエリスロマイシンやクリンダマイシンに耐性が報告されています。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育