microbiology round

microbiology roundはActinotignum schaaliiについて取り上げました。
アミロイドーシスで循環器内科かかりつけの70代男性。転倒後にショックとなりCTで上臀筋動脈からの出血と診断されTAEが施行され入院しました。上記CTで前立腺に低吸収域を認めていました。上下部尿路症状やCVA叩打痛、前立腺圧痛もありませんでした。入院時に採取した血液培養から2セット中1セット、嫌気ボトル1本より42時間で陽性となり、coryneformをグラム陽性桿菌を認めました。血液寒天培地、チョコレート寒天培地、ブルセラHK寒天培地で37℃炭酸ガス培養、嫌気培養を実施したところ、48時間後に血液寒天培地、ブルセラHK培地で発育を認めました。MALDI Biotyperを用いて同定したところA. schaalii(スコア2.26 カテゴリーA)となりました。

■名前の由来、歴史
Actino: ray 放射線
Tignum:beam=rod
Actinotignumは糸状に生育する桿菌という意味
Achaalii:ドイツの細菌学者のKlaus P schaalにちなんで
Actinotignum属は1997年に初めて報告された。2015年に再分類がされActinotignum schaaliiとなりました。

■微生物学的特徴
非運動性、芽胞非形成、通性嫌気性、グラム陽性桿菌です。
直線からわずかに湾曲したり、球桿菌型など多形性を示します。
嫌気条件または炭酸ガス条件下で発育が良好で灰白色のコロニーとなります。
尿路感染症の原因菌ですが通常尿では炭酸ガスや嫌気培養を行わないため、グラム染色から疑って培養条件を追加することが検出のポイントです。
カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、ウレアーゼ陰性です。

■臨床像
A. schaaliiはヒトの泌尿生殖器に常在し、Actinotignum属の中ではヒトに感染する唯一の細菌とされています。
泌尿器系に基礎疾患を持つ高齢者に尿路感染症を起こします。
A. schaaliiによる感染症172例の検討において尿路感染症が121例(70%)、ついで菌血症が33例(19%)でした。
Lotte R, Lotte L, Ruimy R. Actinotignum schaalii (formerly Actinobaculum schaalii): a newly recognized pathogen-review of the literature. Clin Microbiol Infect. 2016;22(1):28-36. doi:10.1016/j.cmi.2015.10.038
他に膿瘍、骨髄炎、椎体炎、IE、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、フルニエ壊疽、精巣上体炎、SSI、肺炎の報告があります。

■感受性、治療
本菌に対してCLSI、EUCASTにおける各抗菌薬に対するブレイクポイントは設定されていません。
報告ではPCG、AMPC、CTRX、VCM、GM、LZDに100%感性です。
一方CPFX、ST合剤、MNZにはほとんど耐性です。
Cattoir V, Varca A, Greub G, Prod'hom G, Legrand P, Lienhard R. In vitro susceptibility of Actinobaculum schaalii to 12 antimicrobial agents and molecular analysis of fluoroquinolone resistance. J Antimicrob Chemother. 2010;65(12):2514-2517. doi:10.1093/jac/dkq383

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育