microbiology round

4/27のMicrobiology roundではPeptoniphilus harei について取り上げました。

【症例】
寝たきりの高齢女性が入院中に発熱し、発熱時の血液培養2セット中2セットからPeptoniphilus harei が発育した。初期診断は急性腎盂腎炎であったが、微生物の特徴を踏まえて感染巣を見直したところ子宮留膿腫が判明した。
【菌名の由来】
Peptoniphilus = peptone(ペプトン)philus(好む)+harei(野ウサギ)
Peptoniphilus 属は現在 20 種が知られている。Peptoniphilus hareiは、1997年にPeptostreptococcus harei としてMurdoch らが報告した偏性嫌気性グラム陽性球菌であり、2001年に 16SrRNA 遺伝子解析に基づく遺伝学的分類法により Peptosreptococcus 属からPeptoniphilus 属に変更された。
https://www.bacterio.net/genus/peptoniphilus

【微生物学的特徴】
Peptoniphilus 属は偏性嫌気性グラム陽性球菌で、集塊状として観察されることが多く、P. harei はさまざまな形態や大きさでみられる。グラム不定に染色されることもある。ブルセラHK寒天培地上に平らで半透明、非溶血性のコロニーを形成する。MALDI-TOF MSはP. harei を収載しており、本菌の同定に有用であると考えられる。

【臨床的特徴】
P. harei はヒトの皮膚、膣、腸管に常在しており、皮膚軟部組織感染(創部感染、褥瘡感染や糖尿病性潰瘍感染)、腹腔内感染、泌尿生殖器感染などの原因になるとされる。関節感染や乳房インプラント感染、感染性腹部大動脈瘤の報告もある。単独感染例よりも、複数菌感染例にみられることが多い。

【治療】
P. harei 自体では大規模な感受性のデータはなく、CLSI でも breakpoint は設定されていないが、ペニシリン系やメトロニダゾールに感受性があることが多い。クリンダマイシンは耐性のことがある。キノロン系は耐性のことが多い。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育