Microbiology round

3/30のMicrobiology roundでは、人工弁感染性心内膜炎患者の血液培養から発育したStreptococcus mitis groupを扱いました。
Streptococci:複数形 Streptococcus:単数形

<微生物学的特徴>

  • mitis=mild
  • S. mitis groupは980年に登録された。
  • S. mitis groupには、他に、S. pneumoniae、S. cristatus、S. infantis、S. oralis、S. peroris、S. tigurinusがある。
  • コロニーの特徴:α溶血(ヒツジ血液、チョコレート寒天培地でコロニー周囲が緑色)
  • Gram染色では、short chainだがcluster状に見えることもある。Staphylococcus属より小さい。

<S. pneumoniae と他のS. mitis groupの鑑別は?>
1. コロニーの形態
2. オプトヒン感受性試験
3. 胆汁溶解試験
4. MALDI-TOF MS
5. 16S rRNA遺伝子
6. rpoB遺伝子

1. コロニーの形態:
S. pnuemoniaeはコロニーの陥没が特徴(自己溶解するため)。だがすべての菌株がこのコロニー形態を示すわけではない。

2. オプトヒン感受性試験
S. pneumoniaeを塗布した血液寒天培地にオプトヒンディスクをおいて好気培養→S. pneumoniaeは14mm以上の阻止円あり(中にはオプトヒン耐性の株もある)

3. 胆汁溶解試験:10%デオキシコール酸ナトリウム水溶液に菌液を混ぜてインキュベート→S. pneumoniaeでは菌の溶解で濁度が低下。
<胆汁溶解試験とオプトヒン感受性の結果が一致しないときは?>
・胆汁溶解試験の結果を優先。

4. MALDI-TOF MS
S. tigurinusを除く種判定に有効。だが、非定型のS. pneumoniaeや他のS. mitis group分離株を誤認する可能性がある。

5. 16S rRNA遺伝子
属やS. mitis groupの解像度が高いが種までの解像度は低い。S. mitis、S. pneumoniae、S. pseudopneumoniaeの区別がつかない。

6. rpoB遺伝子
種レベルでの同定成績が16SrRNA遺伝子よりも高い

<臨床的特徴>

  • IE:亜急性自然弁IE(NVE)、後期の人工弁IE(PVE)。反応性関節炎を合併することがある。
  • 歯・頚部膿瘍や肝膿瘍も多い。骨髄炎、皮膚軟部組織感染症、尿路感染症はまれ。
  • 髄膜炎:無菌性髄膜炎様の単球優位の軽度の細胞数上昇。
  • 眼内炎:硝子体内注射で増加。
  • 長期好中球減少では口腔内粘膜バリア破綻による菌血症

<治療>

  • PCG+GM
  • S. mitisとS. oralisはViridans Streptococciの中でもペニシリン耐性のことが多い。→ペニシリン結合蛋白の変化のため(ベータラクタマーゼを介していないため)、アンピシリンスルバクタムは無効。
  • STとシプロフロキサシンは活性がほとんどない。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育