亀田感染症KINDセミナー質疑応答(HIVレクチャー)

6月の亀田感染症KINDセミナーに参加くださいました皆様、ありがとうございました。頂いた質問にお答えいたしていきます!

■HIVレクチャーへの質問です。

Q1. CD4<500でないと障害者手帳がもらえず、治療費が自費になってしまうと理解していたのですが、以レクチャーでお話いただいた利点を鑑みると、これ以前で始めることもあるのでしょうか
A1. 非常に鋭い質問だと思います。ARTは開始すると、基本的には一生飲み続けることとなり、経済的な負担はかなりのものとなります。これらの負担を軽減するために、身体障害者手帳の交付などを受けることができます。HIV感染症の場合は、その中でも、「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害(免疫機能障害)」となり、1級から4級までの等級が定められています。その中で、"CD4リンパ球が200/μ以下"で無いと承認されないのは1級のみで、2級から4級の証人については、必ずしも"CD4リンパ球が200/μ以下"は必須の項目ではなく、そのほかの症状は検査値により交付を受けることができますので、安心してARTを開始いただけます。尚、欧米では診断と同時にARTを開始することが推奨されていますが、上記の身体障害者手帳の交付のために、診断時と4週後の検査値が必要であるため、日本においては現実的なプラクティスとはなっておりません。
(参考文献)
https://www.haart-support.jp/manual/team_medical_manuall2-2.pdf

Q2. 急性HIV感染症を疑い、HIV抗原/抗体検査が陰性でRNA測定ができない場合だと、対症療法で帰宅→2−3週間後再建というような流れが現実的でしょうか。
A2. 理想的にはHIV NATの検査を行いたいところですが、難しい場合は期間を空けて再検査を行うことは現実的であると思います。配布資料のおまけ3にあるように、各検査毎に陽性までに必要な日数が決まっておりますので、ご自身の施設で使用されている検査が何を使用しているかを確認した上で、感染が疑われる日から十分な期間をあけて再検査を行ってください。

Q3. 感冒症状患者にCMV、HBV、HIVの抗体をオーダーするのはどのような所見をみとめるときでしょうか。また、具体的な時期を教えてください。
A3. まずは伝染性単核球症(様)症候群の臨床的なプレゼンテーションを理解することが大切であると思います。共に、咽頭痛を含む上気道症状を起こすことは共通しておりますが、感冒は通常、鼻汁を伴い、3-5日程度で軽快します。伝染性単核球(様)症候群では、鼻汁はあまり一般的ではなく、リンパ節腫脹、肝脾腫、がみられ血液検査では、異形リンパ球、AST、ALTの上昇などがみられ、症状は数週〜1-2ヶ月の経過で徐々に軽快していきます。ですので、上気道炎を疑う患者さんを診療する場合は、余程重症感が強くなければ1週間は経過を見ていて、症状が持続する様であれば、伝染性単核球(様)症候群を疑い、EBV、CMV、トキソプラズマ感染症の検査を行い、明らかな病原体が捕まらない場合に急性HIV感染症を疑うという流れで良いかと思います。もちろん、診療の早い段階で性感染症のリスクが高いと判断できた場合には、少し早めの段階で急性HIV感染症の検査を行っても良いと思います。

Q4. 発症何週間後から、第四世代ではなく、RNAの方をオーダーするべきでしょうか。
A4. 配布資料のおまけ3にHIV検査の詳細についての情報を載せています。第4世代のスクリーニング検査は感染から15-20日程度で陽性となってくるため、それよりも早い段階でクリニックを受診し、臨床的に急性HIV感染症が疑われる場合には、HIV NATをオーダーすると良いと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育