第4回KINDセミナー:講義6「結核の基礎知識」質疑応答
先日のKINDセミナーの講義の「結核の基礎知識(大澤担当分)」のQ&Aです。
Q1. 高齢者の潜在結核を拾い上げて、積極的に治療する対策は考えられますか?
A1. リスクとベネフィットの比によります。結核発症の高リスクと考えられる、1-2年以内の結核暴露や免疫抑制剤の使用がある患者さんでは、積極的に治療した方が良いと思います。逆に、もともと健康な方で1-2年以内の結核暴露の既往がない方でしたら、INHやRFPによる副作用を考えて治療しない選択肢もあります。潜在結核のスクリーニング検査は、陽性だった時に予防投与を考慮する患者さんのみで施行するのが原則です。
Q2. 生物学製剤の導入時のLTBIの判定でIGRA陰性の時、胸膜肥厚やリンパ節石灰化があるとき、LTBIの治療をすべきでしょうか?
A2. これもリスクとベネフィットの比によると思います。結核の濃厚の暴露が過去にあり、LTBIの検査前確率が高い場合は、IGRA陰性でもLTBIの可能性は残ります。特に細胞性免疫の低下が疑われる患者さんでは、IGRAの感度が下がります。ツ反をみてもいいかもしれませんし、LTBIの治療を考慮してもいいかと思います。症例ごとの検討が必要です。
Q3. 肺外結核の患者で、呼吸症状がなくても喀痰の塗抹は確認するべきでしょうか?
A3. 呼吸器症状がほとんどない肺結核の患者さんはいるので、塗抹は確認しておいた方がいいと思います。呼吸器症状が全くなく胸部CTでも所見がなければ必要ないかもしれません。
Q4. 腸結核の患者でINH, EB, LVFXの治療をしている患者さんがいました。抗菌薬の強さに差があるのか?
A4. 一般的には、RFPが一番重要な抗菌薬とされています。次はINHになります。RFPを使わない理由は、薬物の相互作用、副作用、耐性(RFPだけ耐性になることは少ないと思いますが)などがあると思いますが、RFPを使わないレジメンでは一般的に治療期間がかなり長期になります。標準治療である4剤が使えないときの治療レジメンは複雑になるので、結核の専門家にご相談ください。
Q5. TBを疑っているのに、ネブライザー吸入をすることで感染拡大することはないのでしょうか?
A5. ネブライザーの吸入では飛沫核はできないために、ネブライザーを介しての感染拡大は考えにくいです。
Q6. 肺結核の治療中の隔離解除のタイミングは?
A6. 抗結核薬を2週間以上投与して臨床的に改善があれば、喀痰の塗抹検査を行います。3回続けて陰性であれば、隔離解除可能です。
Q7. MDR-TBの場合は、長期間の隔離が必要か?
A7. 2005年に日本結核病学会から出された「結核の入院と退院の基準に関する見解」によれば、多剤耐性結核の場合には,退院には治療効果を判断するために培養検査における菌陰性化の確認を必要とするとあります。
Q8. 原因不明の胸膜炎で(培養やPCR済)、胸膜生検で組織培養するか、治療的診断のどちらが良いか?何ヶ月で治療反応があると考えるか?
A8. 胸膜生検をしても診断できない場合もありますが、可能な限り組織を培養に出す(陽性だったら、結核菌の感受性試験が可能のため)のが原則です。もちろん、治療的診断をすることもあります。その場合は、2ヶ月前後待つことが多いです。
Q9. 喀痰のPCR陰性でも臨床的に結核を疑っていたら、再度PCRを施行すべきか?
A9. 塗抹が陽性の喀痰検体でPCRが陰性であれば、結核は否定的です。塗抹が陰性の検体では、PCRの感度が高くない(UpToDateによると75-88%)ために再度PCRを施行して良いと思います。
Q10. 結核を治療した患者で、化学療法を行う際に抗結核薬(もしくは予防投与)を再開すべきか?
A10. 治療を完遂した患者では、原則として不要です。
このサイトの監修者
亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長 細川 直登
【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育