第3回亀田感染症セミナーin東京の質問への回答(講義5)

「第3回亀田感染症セミナーin東京」で頂いた質問への回答です。たくさんの質問をありがとうございます。講義ではあまり出てこなかった、IEの経験的治療、などについて触れています。参考になれば幸いです。

講義5:感染性心内膜炎

Q1:感染性心内膜炎の死亡原因は?
A1:菌血症が切れない間に消耗、塞栓多発、多臓器不全、心不全などが挙げられます。

Q2:腸球菌IEでGMとCTRXのシナジーはどちらが上でしょうか?
A2:同等として推奨されています。CTRXは6週、GMは4-6週である点に注意しましょう。

Q3:菌血症が切れなくてOPE適応がない患者の対応は?
A3:まずは持続菌血症となりうるIE以外の原因(膿瘍・膿胸など)検索を行い、必要があればドレナージを行います。それらがなくIEそのものによる持続菌血症がある場合、予後は厳しいです。根拠はありませんが、MRSAのIEで菌血症が長期持続する場合(例えば10日以上)にVCMをダプトマイシンに変更してみることはあります。

Q4:死亡率は治療をしても高いのでしょうか?未治療時に高いだけでしょうか?
A4:感染性心内膜炎に対して抗菌薬を使用しない場合は致死率100パーセントです。抗菌薬を使用した場合は原因菌によって異なります。配布資料をご参照ください。

Q5:弁周囲膿瘍はTTE/TEEそれぞれでどのようにみえますか?
A5:弁周囲の壊死、腔が形成され心血管に交通がないように見えます。TTEとTEEで見えかたがどのように違うかを記載した文献は見つけられませんでした。

Q6:弁周囲膿瘍を疑う所見はありますか?
A6:多発塞栓や持続菌血症は可能性を高める所見ですが、いずれも参考程度です。やはり決め手はエコーで診断せざるをえません。

Q7:TEEを避けられる基準はありますか?
腸球菌はNOVAスコア、非β溶連菌はHANDOCスコア、ブドウ球菌はVIRSTA Scoreが知られています。ただ実際はこれらのスコアは使っておらず、TTE反復か、他のminor criteriaを集めてIEの可能性を見積もっています。

Q8:エンピリック治療でセフトリアキソン+アンピシリン/スルバクタム併用のメリットは?
A8:日本循環器内科学会のガイドラインは、項目によっては、いわゆる標準的に行われる治療から逸脱していることがあり、実際はAHA(米国)とESC(欧州)ガイドラインに沿って抗菌薬を使用していることが多いです。
緩徐発症なIEは起炎菌同定をまず行い最適治療を行います。どうしても待てないときは古典的にはA/S+GMを選択します(管理人追記:このレジメンは、2009年の欧州のIEガイドライン European Heart Journal 2009;30:2369-2413と2005年の米国のIEガイドラインCirculation 2005;111;e394-e434に記載されています。2015年の欧州のガイドラインEuropean Heart Journal 2015;36:3075-3123では、アンピシリン+クロキサシリン+ゲンタマイシンが推奨されており、若干の変更がありました。2015年のAHAガイドラインの培養陰性のIEの治療は、特に決まった治療レジメンは記載されておらず、経過や患者背景などから推定される細菌を治療すべきとされています。例として、急性発症の場合はセフェピム+バンコマイシン、亜急性の経過の場合は、アンピシリン/スルバクタムが記載されています。臨床経過から、どの細菌の可能性があるかを検討して、それらを十分にカバーできる治療を行うことが重要だと考えます)。A/SにCTRXを加えることで腸球菌IEの治療やGNRカバーが追加で行えるメリットはあるりますが、それは培養がわかってからでも遅くないと思います。

Q9:予防的抗菌薬はどのような処置で必要でしょうか?
A9:観血的歯科処置、つまり抜歯や歯肉を操作して出血する処置。

Q10:大きな心原性塞栓がある状況で手術適応となる症状がある場合はOPEのタイミングはどうしていますか?
A10:抗凝固により頭蓋内出血が起こってしまい、人工心肺が回せないため、実際には手術は困難なことが多いです。具体的には心臓外科と相談して方針を最終決定します。

Q11:無症候性の脳梗塞では外科的介入をしたほうがよいでしょうか?
A11:無症候なものはIEでかなりの割合で生じるためこれだけでは手術は不要です。疣贅の大きさや菌血症持続などのその他の状況を加味して、外科的介入の必要性を検討します。

Q12:ガイドラインに記載があるように、感受性がよいViridans IEはGMを併用することで治療期間が2週間に短縮できるのでしょうか?
A12:AHAガイドラインにはuncomplicatedな症例で2週間治療の選択肢の記載ありますが、根拠に乏しく(管理人追記:ガイドラインの根拠となっている文献のひとつは、小規模な研究であり、2週間治療群では心臓外科手術の頻度の増加の可能性が指摘されています:Clin Infect Dis 1998;27:1470-1474)、実際は2週間治療は行っていません。私たちは4週間治療しています。(以下、細川先生記載:個人的に周囲の感染症専門家に聞いても2週間で治療するという人はいません。米国の感染症専門医も2週間で治療はしていないとのことです。)

Q13:IEに典型的な菌はなんでしょうか?
A13:S. aureus、Viridans streptococci、S. bovis(S. gallolyticus)、HACEKです。IDSAガイドラインのDuke's criteriaに記載されています。

Q14:E. faeciumの場合のVCMトラフ目標値はなんでしょうか?
A14:トラフ濃度は10-15を目標にしています。重症感染でS. aureusの場合は15-20を目標とします。

Q15:心カテを行うときの抗菌薬投与のエビデンスはありますか?
A15:弁膜症があっても処置前抗菌薬を推奨するエビデンスはありません。TEEでも術前抗菌薬を推奨する記載はありませんので、当院では行っておりません。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育