スウェーデンの589722人におけるCovid-19ワクチンのCovid-19罹患後症状に対する有効性:集団ベースのコホート研究

Journal Title
Covid-19 vaccine effectiveness against post-covid-19 condition among 589722 individuals in Sweden: population based cohort study

論文の要約
【背景・目的】
SARS-CoV-2感染や急性COVID-19の重篤な症状に対するCOVID-19ワクチンの有効性が示されている。しかし、パンデミックの宣言後、COVID-19から回復した一部の人々の間でなんらかの症状が持続していることが報告され、long COVIDまたはpost-COVID-19 condition(PCC)と呼ばれた。
最近のシステマティックレビューでは、SARS-CoV-2感染前のCOVID-19ワクチン接種にPCCに対する予防効果があると報告されたが、その著者らは、研究間の異質性が高く、交絡やバイアスの調整が不十分であり、エビデンスの確実性は低いと結論づけた。SCIFI-PEARL(Swedish Covid-19 Investigation for Future Insights-a Population Epidemiology Approach using Register Linkage)プロジェクトのデータベースを通じて、スウェーデンの2つの大きな地域(ストックホルム地域とヴェストラ・ゲータランド地域;スウェーデン人口の約40%をカバー)のワクチン接種状況、疾患、社会人口統計学的情報、一次医療データに関する全国登録データを用いて、感染前にワクチン接種を受けた人のPCCに対する一次ワクチン接種(推奨スケジュール内の最初の2回のワクチン接種と最初のブースター接種)の有効性を調査した。
【方法】
本研究は、SCIFI-PEARLプロジェクトのデータベースを使用し、のすべての成人(18歳以上)を対象とした登録ベースの後ろ向きコホート研究である。COVID-19指標日(COVID-19が最初に登録された日)の28日後からPCC診断、ワクチン接種、再感染、死亡、移住、追跡終了(2022年11月30日)のいずれか早い日までを追跡期間とした。COVID-19指標日以前にスウェーデンで利用可能なワクチンのいずれかを少なくとも1回接種したものをワクチン接種済みと定義した。Primary outcomeは、COVID-19指標日から28日以上経過した時点でのPCCの臨床診断(ICD-10 U09.9)とした。Cox比例ハザード回帰を行い、感染前のCOVID-19ワクチン接種の有効性とPCC発症リスクを推定した。
COVID-19指標日前にワクチン接種回数(1回、2回、3回以上)、急性感染の重症度で層別化した解析も行った。感染前の最初の2回の接種に使用したワクチンの組み合わせによって分類し、異なるワクチンに関する個別のサブグループ解析も実施した。
【結果】
研究集団の589722人のうち、299692人(50.8%)はCOVID-19指標日の前に少なくとも1回COVID -19ワクチンを接種しており、290030人(49.2%)は感染時にワクチンを接種していなかった。ワクチン接種者のうち、21 111人は1回のみ、205 650人は2回、72843人は3回、88人はCOVID -19指標日以前に3回以上接種を受けていた。ワクチン接種者では、追跡調査中にPCCと診断されたのは1201人(0.4%)であったのに対し、ワクチン未接種者では4118人(1.4%)であった。
COVID-19指標日前に少なくとも1回COVID-19ワクチンを接種していることは、PCCリスクの低下と関連しており(調整ハザード比0.42(95%信頼区間0.38~0.46)、ワクチン有効性は58%であり、ワクチン接種回数が増えるにつれて増加した。1回接種、2回接種、3回接種の調整ハザード比は0.79(0.68~0.91)、0.41(0.37~0.45)、0.27(0.23~0.32)であり、それぞれのワクチン有効性は21%、59%、73%であった。

Implication
本研究では、初回登録のCOVID-19感染前のワクチン接種とPCC診断を受けるリスクの減少との間に強い関連を認め、初回登録感染前に接種された一次 接種シリーズにおいて、接種回数が増えるにつれて有効性は増加し、感度分析いずれにおいても、主解析と同様の結果が得られ頑健性が確認された。しかし、Limitationとして、PCCと登録されるためには、患者が病院を受診し、担当医師が診断し、データに登録する必要があるため、過小評価された可能性がある。また、感染時期が異なれば、ウイルス型が異なり、PCCのなりやすさ、生存率、PCCの認知度が異なることになり、時間依存性交絡が存在する。以上からこのような交絡に対処した研究が待たれる。

文責 富田将司/南三郎

このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科