中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者を対象としたウパダシチニブとデュピルマブの有効性と安全性のランダム化比較試験

Journal Title
Efficacy and Safety of Upadacitinib vs Dupilumab in Adults With Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis A Randomized Clinical Trial
JAMA Dermatol. 2021;157(9):1047-1055.

論文の要約
背景: アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;以下AD)は、慢性で再発性の高い炎症性皮膚疾患である。その原因の一つには、Interleukin(IL)-4を含む様々な炎症性メディエータが、その下流にあるJanus kinase-signal transducer and activation of transcription(JAK-STAT) signaling pathwayを介して関与していることがわかっている。デュピルマブは完全ヒト抗IL-4受容体αモノクローナル抗体で、中等症から重症のADを対象として承認されている。しかし、単独の治療では16週間投与しても、湿疹が完全または、ほぼ完全に消失する患者は半数に満たない。また、最大の反応が現れるまでに、12週間を要する。ウパダシチニブは、経口投与が可能で、効果は可逆的な、低分子JAK阻害薬で、他のJAK阻害薬に比べ特異性が高く、有効性と安全性の改善させるため開発された。そこで、ウパダシチニブとデュピルマブの有効性と安全性を直接比較する第3b相臨床試験をおこなれた。

方法: 全身治療の候補である中等度から重度のAD患者(ベースラインで体表面の10%以上に病変があり、湿疹面積と重症度指数(EASI)スコアが16以上、治験担当医による全般的評価尺度-vIGAスコアが3以上であり、最悪の痒みの数値評価スケール(NRS) のスコアの1週間の平均が4以上の患者)を対象に、ウパダシチニブとデュピルマブの安全性と有効性を比較するためhead-to-headの24週間の第3b相、多施設、無作為、二重盲検、二重ダミー、アクティブコントロールの臨床試験を行った。試験は欧州、北米、南米、オセアニア、アジア太平洋地域の22カ国にある129施設で実施した。患者は35日間のスクリーニング期間を通し適格性を評価され、その後、ウパダシチニブ30mgを1日1回経口投与する群とデュピルマブ300mg(初回は600mg)を隔週で皮下投与する群に1:1に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、16週目のEASI75(Eczema Area and Severity Indexの75%改善)の達成とした。副次的評価項目は、最悪の痒みの数値評価スケール(週平均)(以下、WP-NRSと記載)のベースラインからの変化率、16週目のEASI100およびEASI90達成患者の割合、4週目のWP-NRSのベースラインからの変化率、2週目のEASI75達成患者の割合、1週目のWP-NRSのベースラインからの変化率、16週目のWP-NRSの4点以上の改善とした。24週目のエンドポイントは、EASI75、EASI90、EASI100、およびWP-NRSのベースラインからの4点以上の改善とした。安全性については、いずれかの薬剤を1回以上投与されたすべての患者において、治療上問題となる有害事象を評価した。多重比較に対しては階層的評価を行い、type?エラーを調整した。サンプルサイズは、デュピルマブ のEASI 75 の達成割合を50%ととし、1最小効果量を12%、両側αを0.05として、625人とすると検出力は80%以上見込めると計算した。有効性の解析は、intent-to-treatで実施した。

結果: 2019年2月21日から2020年12月9日にスクリーニングされた924人の患者のうち、348人がウパダシチニブ投与に、344人がデュピルマブ投与に割り付けられた。16週目に、ウパダシチニブ投与群247人(71.0%)とデュピルマブ投与群210人(61.1%)がEASI75を達成した(P=0.006)。ランク付けされたすべての副次的評価項目においても、1週目という早い段階でWP-NRSの改善、31.4%[1.7%] vs 8.8%[1.8%]; P < .001)、2週間という早い段階でEASI75を達成152 [43.7%] vs 60 [17.4%]; P < .001 )、16週目のEASI100を達成(97 [27.9%] vs 26 [7.6%]; P < .001 )だった。重篤な感染症、ヘルペス性湿疹、帯状疱疹および治療関連有害事象の割合は、ウパダシチニブ投与群で高かったのに対し、結膜炎および注射部位反応の割合は、デュピルマブ投与群で高かった。[Implication]
本試験において、ウパダシチニブは中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者においてデュピルマブに対して主要評価項目のみならず、副次評価項目を含む、一貫した有効性(即効性、効果)および安全性を示した。今後の難治性重症アトピー性皮膚炎の重要な治療オプションとなることは間違いない。しかし、長期使用に伴う副作用情報は本試験結果のみでは不十分である。また、本試験の24週間の治療にかかる費用はデュピルマブ(初回投与 初回133,124円 2回目以降 66,562円)で865306円、ウパダシチニブ(30mg7459.4円)で1253179.2円かかるため、主要評価項目を10%改善(即時性も含め)させるために追加費用はおよそ40万円近くかかる計算である。今後は費用対効果も含めた治療レジメが作られていくことを期待する。

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文責 長山理依・南三郎


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科