LIMIT臨床判断ツールは、再発発作において、臨床医の判断と比較して脳画像検査を減らす

Journal Title
The LIMIT clinical decision instrument reduces neuroimaging compared to unstructured clinician judgement in recurrent seizures.

論文の要約
背景:初発の発作を起こした患者には緊急の神経画像が必要であるというコンセンサスは得られているが、2回目以降の発作の患者に緊急の神経画像が必要であるかというガイダンスはほとんどない。Isenbergらは以前、初発ではないてんかん発作の患者のうち,どの患者が緊急の神経画像を必要とするかを判断するためのLIMIT-CDI(Let's Image Malignancy, Intracranial Hemorrhage, and Trauma clinical decision instrument)を開発・検証した。CDIは、外傷、頭蓋内出血の既往、活動性悪性腫瘍という3つの要素で構成されており、感度は90%、陰性予測値は99.5%であった。本研究は、LIMIT CDIと医師の判断を比較した。

方法:本研究は、大学病院、近接する市中病院に発作を主訴に来院した患者を対象とした後方視研究である。初発の発作、巣症状、Ventriculoperitoneal shuntのあるもの、救急医が発作ではないと判断したもの、転院してきたものは除外された。研究助手が対象患者の電子カルテを確認し、LIMIT-CDIの項目に当てはまるものがないか確認した。脳CTがオーダーされたことをもって、そのオーダーした医師が頭蓋内疾患のリスクが高いと判断したものとした。脳CTがオーダーされず、患者が緊急室から退院した場合は、緊急室がルーチンで行っている電話フォローアップで追跡した。それがない場合、その診察から1年以内に医療機関を受診したかどうか地域で共有されている電子カルテを利用し調べた。フォローアップでは、新規神経学的異常がみられた場合や最初に緊急室を訪れた原因と考えられる異常が脳画像で判明していた場合は見逃しと判断し、そうでなければ、脳CTを必要としなかった患者と判断した。EDの受診時にCTがなく、フォローアップの受診もない患者は除外した。

結果:2019年5月14日?2020年3月9日の期間に、1739人の患者が発作を主訴にEDを受診した。1108人の患者が最終的な分析対象となった。脳CTがなく、経過観察もされていない24名の患者を除外した。10人の患者(0.9%)は脳CTで異常所見を認めた。そのうち9人の患者がCDIで識別され、感度90%、特異度81.1%、陰性予測値(NPV)99.9%、陰性尤度比(LR)0.12という結果になった。臨床医の判断により、脳CTで異常を認めた10名の患者はすべてEDにてCT検査が施行され、感度は100%、特異度は67.8%、NPVとネガティブLRはそれぞれ100%と0であった。臨床判断を用いた場合、364件の脳CTが施行されたが、CDIを用いた場合には217件の脳CTしか施行されず、13.3%削減された。

Implication
本研究はLIMIT-CDIの検査特性を、臨床医判断と比較した観察研究である。結果としてLIMIT-CDIは1人の見逃しを生んだが、13%ほどのCT撮影を削減できたとほ報告された。しかし、緊急室で脳CTを撮影された患者とされなかった患者では評価されるアウトカムが異なる点や、ルーチンでの電話フォローの方法が不明確であるため、初療で見逃された患者の評価に一貫性がなく内的妥当性に問題があると考える。外的妥当性においては米国で行われた試験であるが、白人が8.8%しか組み入れられておらず、一般化可能性も懸念される。
LIMIT-CDIは非常に単純であり、実臨床に応用しやすく有望なルールと言える。今後このルールの有用性を証明するには、LIMIT-CDIを利用する群としない群の間で何らかの統一されたアウトカム指標を用いたクラスターランダム化比較試験による検証が必要と考える。

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文責 中村祐太/南三郎


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科