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2012年Sepsis surviving campaign guidelineにsepsis bundleが記載された。Sepsis bundleの各項目はガイドラインでは強く推奨されているが、根拠としては観察研究などが基になっており議論の的となっている。当研究は観察研究の結果と理論的背景に支えられたbundleが実際にsepsis、septic shockの予後を改善するかを調べた。ERでsepsis bundleを遵守することが義務づけられているNew YorkのNYSDOHデータベースを利用し2014年4月から2016年1月において後ろ向き観察研究が行われた。データベースを利用する関係からコホートの90%をランダムに抽出し、リスクモデルを作成し、残り10%で内的妥当性を検証した。病院間のcluster効果を調整するため病院をランダム効果とし、マルチレベル回帰分析も行った。さらに結果を頑健にするため以下のような感度分析も行われた。Inclusion、exclusionに関連した時間軸の変更、BSCとなった患者を病院死亡として扱う、プロトコール開始前にbundleが開始された群を除外するなどして解析された。結果としてbundle遂行時間、抗菌薬投与時間と病院死亡率に相関関係があることが示され、輸液負荷の時間とは相関関係は示されなかった。感度分析の結果も矛盾しない結果だった。以上からNew Yorkのみで行われたものでありgenerabilityに問題はあるもののSepsis bundleの有効性を示す研究であった。

診療報酬の支払いデータベースを利用した研究であり、交絡因子が十分に調整されているとはいえず、治療の早期完遂が良好な転帰に繋がるという因果関係は言えない。しかし、著者たちはしたたかにも定量的バイアス解析を行い、対象の20%に主要アウトカムのオッズへの相対リスクが1.3を超える未知の影響の大きな共変量が存在した場合にこの結果が有意ではなくなることを示している。主要解析の結果を十重二十重に周到に守った研究である。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科