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これまでの先行研究においては皮膚切開ドレナージ後にクリンダマイシンがST合剤を使用した場合に差がないこと、ST合剤かプラセボを使用するとST合剤を使用した場合において治癒率が有意に高くなることが示されていた。本研究は皮膚感染症の原因菌の半数がMRSAとなるアメリカ6施設において皮膚膿瘍に対して切開ドレナージ後にクリンダマイシンかST合剤かプラセボを内服して10日後にそれぞれの治癒率を比較した臨床研究である。患者群全体の結果では、ST群とクリンダマイシン群でプラセボ群と比較して有意に治癒率が高かった。黄色ブドウ球菌感染症に対してはST群とクリンダマイシン群でプラセボ群と比較して有意に治癒率が高かったがST群とクリンダマイシン群では差がなかった。また、非ブドウ球菌感染においては全ての薬剤で治癒率に差がなかった。クリンダマイシンを使用すれば新規感染や再発率もクリンダマイシン群やプラセボ群より有意に低いことが判明したがその半面で有害事象が増えてくることも明らかとなった。本研究は実薬によるランダム化比較試験でありinformation viasはかかりやすいと思われるが薬剤の形や味などは徹底的なmakingが行われておりsoft endpointの結果は信用できると考えられる。CONSORTに従っているとの記載はあるがランダム化以前の情報がなく、母集団からDM患者を含む様々な基礎疾患をもつ患者を除外しており外来患者母集団として一般化できていないという難点がある。アメリカでは一般外来を受診する皮膚軟部組織感染症の原因微生物として約半数がCA-MRSAとなっているが日本においてどの程度CA-MRSAの関与があるかわからないため、このtrialの結果をそのまま適応することは判断しかねると考えられる。

A Placebo-Controlled Trial of Antibiotics for Smaller Skin Abscesses Robert S. Daum et al.
N Engl J Med 2017; 376:2545-2555June 29, 2017
DOI: 10.1056/NEJMoa1607033
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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科