小児けいれん性てんかん重積の2次治療におけるレベチラセタムとフェニトインの多施設共同非盲検無作為化試験(EcLiPSE)

Journal Title
Levetiracetam versus phenytoin for second-line treatment of paediatric convulsive status epilepticus (EcLiPSE): a multicentre, open-label, randomised trialRisk of Venous Thromboembolism After Carbon Monoxide Poisoning: A Nationwide Population-Based Study

論文の要約
<背景>
けいれん性てんかん重積は英国では小児100000人あたり20人が罹患する世界中で最も一般的な小児神経学的救急疾患である。死亡率は低いがけいれん性てんかん重積状態の持続時間が長いほど頓挫させるのが難しくなる。けいれん性てんかん重積はAdvanced Pediatric Life Support(APLS)が推奨するアルゴリズムを使用して治療される。ベンゾジアゼピンによる治療後もけいれん性てんかん重積が続く場合2次治療が行われる。それでも続く場合はRSIによる麻酔管理が行われる。一次治療におけるベンゾジアゼピンについてのエビデンスは存在するが2次治療についての十分なエビデンスは存在しない。小児てんかん治療薬の2次治療としてレベチラセタムがフェニトインより有効で安全な抗けいれん薬であるかを判断するのが本研究の目的である。
<方法>
30の英国における二次〜三次医療を担うERにて、非盲検無作為比較試験を行った。対象は6ヶ月〜18歳までの小児患者で、二次治療を必要とするけいれん性てんかん重積状態(全身性強直間代、全身性間代、または限局性間代発作)を呈した患者である。患者がミオクローヌスや非けいれん性てんかん重積、乳児けいれんを呈している場合、レベチラセタムやフェニトインにアレルギーがある場合を除外した。コンピュータで1:1に無作為化し、一方にレベチラセタムを40 mg/kg (5分以上)で投与し、もう一方の群にフェニトインを20 mg/kg (20 min以上)で投与した。割り当てられた治療薬の投与前にけいれん性てんかん重積が頓挫した場合は除外した。サンプルサイズはフェニトインとレベチラセタムの既存の報告された発作停止率に基づいて計算された。サンプルサイズについてはα=0.05, 検出力80%、効果量15%(60%→75%)で、それぞれのグループで140人の参加者を集める必要があると考えられた。10%のフォローロスを考慮すると308人の被験者が必要とされた。Primary endpointはランダム化を行ってからてんかん重積発作が止まるまでの時間とした。分析はmITTで行なった。Secondary endpointは治療薬の投与後にさらに抗けいれん薬が必要性、RSIの必要性、集中治療室への入院の必要性、重篤な副作用についてである。
<結果>
2015年7月17日から2018年4月7日までに1432人のけいれん性てんかん重積患者から1028人の不適格患者を除外した後、404人の患者がランダムに割り当てられた。そこから2次治療を必要としない93人と研究参加に同意しない25人を除外され残った286人分のデータを分析した。mITT分析で152人がレベチラセタムに割り当てられ、134人がフェニトインに割り当てられた。発作停止までの時間の中央値は、フェニトイン群では45分(IQR 24では評価不能)、レベチラセタム群では35分(IQR 20ではRSIにより評価不能)であり、有意な差は見られなかった((HR 1.2, 95% CI 0.91-1.60) P = 0.20)。Secondary endpointとして、レベチラセタムの群で57人、フェニトイン群で50人の患者が追加で抗けいれん薬を投与された。レベチラセタムの群で44人、フェニトイン群で47人がけいれん性てんかん重積のためにRSIを受けた。レベチラセタムの群で97人、フェニトイン群で72人の患者がICUでの治療を受けた。PICUへの入室およびRSIの導入について差はなかった。

Implication
今回の非盲検化多施設共同研究EcLiPSEでは、発作停止までの時間、副作用を含めたあらゆる結果についてレベチラセタムとフェニトインとの間で有意差が検出されなかった。しかし、著者らは本研究結果からてんかん重積発作の2次治療においてレベチラセタムはフェニトインの代替薬となる可能性があると結論づけている。
この論文の内的妥当性としてはプロトコル通りに遂行されている点は内的妥当性が高いが、非盲検化試験であるにもかかわらず、主要評価項目がソフトエンドポイントであり、治療に関わった医師が判断しているため情報バイアスが懸念されるまた、副作用を比較するのに必要な検出力がないと考えられる。
外的妥当性としては、本研究自体が30施設で行なわれており、結果の一般性を高めているが、スクリーニングされた患者の20%程度しか組み入れされておらず選択バイアスも懸念される。
以上からこの研究結果をもって、レベチラセタムがフェニトインの代替薬になるという結論は導き出せないと考える。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科