DVTに対し予防的抗凝固療法に間欠的空気圧迫法を追加するとさらなるDVT予防効果は得られるか?

Adjunctive Intermittent Pneumatic Compression for Venous Thromboprophylaxis
Y.M. Arabi, F. Al-Hameed the Saudi Critical Care Trials Group
DOI: 10.1056/NEJMoa1816150

【評価者】S.M

【背景】 予防的抗凝固療法のDVTに対する予防効果はRCT、システマティックレビューなどで証明されてきたが、間欠的空気圧迫法を追加するとDVTに対して予防効果が強まることの証明はされていない。本研究は集中治療患者において予防的抗凝固療法に間欠的空気圧迫法を追加することでDVTに対する予防効果が強まるかを検証した国際的多施設ランダム化比較試験である。

【方法】サウジアラビア、カナダ、オーストラリア、インドの20施設の内科、外科、外傷集中治療室に48時間以内に入室し、72時間以上入室が予測される患者を組み入れ、すでに間欠的空気圧迫法が導入されていた患者や治療的抗凝固療法が行われている患者などが除外された。介入群にはLMWH or UFHによるDVTに対する予防的抗凝固療法にくわえ、1日最低18時間以上の間欠的空気圧迫法によるDVT予防を行った。対照群では介入群と同様の予防的抗凝固療法のみを行った。主要評価項目は近位DVTの発生率とし、mITT、PPPで解析した。これまでの先行研究をもとに対照群の近位DVT発生率を7%、介入による絶対リスク減少を3%、α=0.05、β=0.8としサンプルサイズは2000とした。副次評価項目、サブグループ、感度分析など事前に設定された。資金提供はサウジアラビアの公的機関によっておこなわれた。

【結果】2014年7月から2018年8月まで16053人の候補から様々な理由で除外された結果、介入群に991人、対照群に1012人が割当てられた。介入群での発生率は3.9%、対照群で4.2%だった。リスク比は0.93(95%CI;0.60-1.44)、調整リスク比は0.93(95%CI;0.61-1.41)だった。

【結論】集中治療患者のDVT予防において、予防的抗凝固療法に間欠的空気圧迫法を追加しても追加のDVTに対する予防効果はみられない。

【考察】当研究は集中治療患者において予防的抗凝固療法に間欠的空気圧迫法を追加することでDVTの予防効果が強まるか検証した初めてのRCTである。事前によくデザインされ、情報バイアス、交絡によく対処している。主要評価項目、感度分析、2次評価項目と結果に矛盾がなく頑健性が強い。以上から予防的抗凝固療法を行うことができる集中治療が必要な患者においてはフットポンプのDVTに対する追加の予防効果はないと言えそうである。一方、比較可能性から組入時にすでにフットポンプが使用されていたり、抗凝固療法が行えない出血患者、治療的抗凝固療法がされている患者などが除外され、12%しか組入されておらず、選択バイアスが懸念される。当研究でしめされたDVT発生率(4%)より高いDVT発生率が報告されている脳卒中や外傷などの高リスク群に対しては当研究においても組入された患者が少なく、この結果を外挿することは出来ない。また、出血など抗凝固療法が行えない患者に対してフットポンプのDVT予防効果がないということも出来ないだろう。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科