不動寺センター長のERひとりでできるもん:第13話 見逃しやすい外傷 〜Secondary survey編〜

KMC ERでの週に1回の不動寺センター長によるER Tipsレクチャーの模様です。
初期研修医やもっとERを学びたい後期研修医向けに一人でER当直を乗り切れることを目標としています。
今回は、Secondary surveyの中で見逃しやすい症例をピックアップして紹介します。

※Tipsの一部を紹介。

・Secondary survey
頭の上から足のつま先まで見ていくことが基本
Vital signに異常があればprimary surveyに戻りましょう
大腿骨骨折は1本あたり750ml程度の出血がありショックをきたすことがあるので注意
前面を見たら背面観察も忘れないように

・症例1 80歳男性の頭部打撲
犬の散歩中に転倒した、後頭部に皮下血腫 
Xp:C5前方脱臼 数え方は骨盤につながっている部分を基準として数を数える
NEXUS low risk criteria:1つでもあれば首の評価を
Canadian c-spine rule:ルールに則れば、四肢の評価が終わるまでは頚椎カラーは外せないことになる
「65歳以上」は頭部CTは全例考慮しなくてもいいが、首は意外と折れていることがある
・NEXUS VS Canadian →NEJM (PMID:14695411) どちらにしても感度特異度は高い
☆頭部の鈍的外傷の時は常に頚椎に注意を払え!

・症例2 15歳男性 左目を殴られた
身体所見:左眼窩周囲に著明な皮下血腫 CT:視束管骨折 
Swinging flashlight test:対的瞳孔求心路障害を見る 障害されている方の対光反射が減弱し、散瞳していく
☆眼球打撲は視束管骨折を見逃すな!

・症例3 15歳男性 自転車で転倒し右肩が痛い
身体所見:右鎖骨に圧痛あり 右上肢の挙上ができない
→腕神経叢引き抜き損傷:C4-T1の神経根から出る神経叢 牽引圧痛で損傷する 鎖骨下動脈損傷に注意 鎖骨上の損傷で神経根症状、鎖骨下の損傷で末梢神経障害(橈骨、尺骨神経)をきたす
☆腕が上がらない時は腕神経引き抜き損傷に気をつけよ!

・症例4 70歳男性の乗用車走行中の交通外傷での胸部打撲
Xp:胸骨骨折
→大動脈損傷 Xp所見:上縦隔拡大8cm Aortic knobの不鮮明化 PA angle消失 気管、左気管支の偏奇、Apical cap sign(縦隔血腫が鎖骨下の上まで広がっていく)、左12肋骨骨折、左胸水(骨折を認めない)
☆前胸部の鈍的外傷は大動脈損傷を見逃すな!

・症例5 1mの脚立から落下した75歳男性
Xp:下部肋骨骨折 エコーにて肝周囲にfree space
☆下部肋骨骨折を見たら肝損傷、脾損傷、腎損傷を考慮せよ!
(注:子供は骨折なくても実質臓器損傷をきたすことがある )

・症例6 夫と喧嘩して腹部を蹴られた38歳女性
明らかな腹部所見は認めなかったが、エコーにて脾周囲にfree space
☆腹腔内出血の20%には腹部所見がない

・症例7 自宅で転倒してから左股関節が痛くて歩けない80歳女性
身体所見で左股関節を回旋すると軽度痛がる Xp:大腿骨に骨折所見なし。。
☆転倒しての股関節痛の時は恥坐骨骨折を考慮せよ!

・症例8 自宅で尻餅をついて合うけない90歳女性の腰痛
L4あたりの横が痛い Xp:腰椎とったが所見ない
☆胸腰椎圧迫骨折は第4腰椎付近の疼痛を訴えることが

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科