不動寺センター長のERひとりでできるもん:第12話 見逃しやすい外傷 〜primary survey編〜

KMC ERでの週に1回の不動寺センター長によるER Tipsレクチャーの模様です。
初期研修医やもっとERを学びたい後期研修医向けに一人でER当直を乗り切れることを目標としています。

定番化してきた不動寺Dr.のひとできですが、Dr.だけでなくNs.や画像技師さんにも広がってきました。名称もERみんなでできるもんに変更でしょうか。

※Tipsの一部を紹介。
*primary survey で見逃しやすい外傷

1.症例1 80歳男性の気道熱傷
→気道閉塞を予測せよ!

・疑う所見:閉鎖空間での熱傷、顔面や頸部や上部体幹のII度深層までの熱傷、鼻毛の熱傷、口腔内のすす
・挿管の適応:咽頭の発赤腫脹、嗄声、気道狭窄音 
 ※挿管困難な場合が多い

2.症例2 30歳男性 背部刺創による開放性気胸
→背部の開放創に気をつけよ!

3.症例3 40歳男性 左の外傷性腎損傷
→血圧が低下する前にショックを認知せよ!

病歴:1mからの脚立から落ちた
注意点:腎損傷は後腹膜臓器、FAST陰性で、腎臓が腹側に移動している所見のみかもしれない
→バイタルに注意して出血の可能性が無いかモニタリングしよう
750mL(循環血漿量の15%)の出血まではショックを認知できないことがある
尿検査で血尿を確認するのは手
★下部肋骨骨折 右:肝損傷 左:脾損傷、腎損傷に注意しよう!

4.症例4 50歳男性 外傷性心タンポナーデ
→ショックの時は閉塞性も考えよ!

60km/hで正面衝突 当初はRR 24以外バイタルの異常ないがSecondaryで収縮期血圧120→70に低下
心嚢液穿刺はエコー下で行うことが多い

5.症例5 30歳男性 外傷性肝損傷と脾損傷
→切迫するDの時はまずABCの安定化を心がけよ!

サッカー中にほかのプレーヤーと接触 E1V1M4 瞳孔5/3
頭部CT撮ろうとしてたら血圧低下
→外傷性肝損傷と脾損傷で出血性ショックだった

6.症例6 70歳男性 緊張性気胸
→Vitalに異常があればprimary surveyに戻れ!

3mの脚立から転落→左胸部痛 RR24 BP 120/70 HR 100 E1V2M5
切迫するD→気管挿管
頭部CTを撮像しようとしたときSpO2 82%、RR 30 呼吸状態悪化
→陽圧呼吸にすると気胸が顕在化することがある

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科