2021.04.23 麻酔科抄読会

Pathophysiology, Transmission, Diagnosis, and Treatment of Coronavirus Disease 2019(COVID-19), W. Joost Wiersinga, MD, PhD et al,
JAMA. 2020;324(8):782-793

担当:寺尾先生/指導医 小林先生

SARS-CoV-2を原因とするCOVID-19は、多臓器障害を伴う肺炎を引き起こし、その入院患者が世界中で急速に増加しました。
今回の論文は2020年7月10日に発行された、COVID-19の病態生理、感染、診断、治療に関するレビューです。

意見
SARS-CoV-2は至近距離での対面による呼吸器の飛沫を介して感染する。無症状、前駆症状や症状を有する場合のいずれでも他者へ感染する。ウイルスにばく露して平均5日で発症し、症状が悪化する場合は97.5%で11.5日以内に悪化する。多くの場合は発熱、乾性咳嗽、呼吸困難を認める。胸部単純X線写真の異常や血液検査でリンパ球減少やLDHの上昇を認めるが、非特異的である。
診断には逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いてSARS-CoV-2を検出するが、偽陰性が20%から67%で生じ、検体の質や採取のタイミングに左右される。
COVID-19の徴候には、無症状から敗血症や急性呼吸不全といった劇症型まで含まれる。COVID-19患者の5%、同疾患で入院した患者の20%が重症化し、集中治療を要する。また、入院患者の75%以上に酸素投与が必要である。COVID-19の治療において、急性呼吸不全に対する呼吸の補助が重要である。デキサメタゾンを投与することで、酸素投与を必要とする患者の28日後の死亡率が低下し(21.6% vs 24.6%; age-adjusted rate ratio, 0.83 [95%CI, 0.74-0.92])し、レミデシビルの投与により退院もしくは酸素投与が不要となるまでの日数が15日から11日へ低下したという報告がある。103人のCOVID-19患者に回復期の患者の血漿を投与したRCTでは回復までの期間は短縮しなかった。現在は抗ウイルス薬、免疫調節薬、抗血栓薬の試験が行われている。
COVID-19の致死率は年齢によって異なり、米国では5歳から17歳では1000例中0.3例、85歳以上で1000例中304.9例が死亡している。集中治療室における致死率は40%に上昇する。120個以上のSARS-CoV-2ワクチンが開発されている。ワクチンが手に入るまでは、飛沫感染を防ぐ方法はマスクの着用、ソーシャルディスタンスをとる、接触者の追跡調査である。

結論
2020年7月1日時点で、世界で1000万人以上がSARS-CoV-2に感染している。伝播、感染、治療に関して多くのことが未だに明らかになっていない。より効果的なCOVID-19の予防と治療を行うためには、さらなる基礎分野および臨床の研究、公衆衛生と臨床への介入が必要である。
COVID-19の病態生理に基づいて血液検査結果や肺胞の病理像の特徴を説明していただき、疾患への理解が深まりました。
今ではSARS-CoV-2ワクチンの接種が普及しつつあり、COIVD-19の新たな治療薬として関節リウマチの治療薬のバリシチニブが厚生労働省に承認されました。この論文が発行された後、さらにCOVID-19の予防と治療の分野が発展しましたが、今後も個人の感染対策は続ける必要はありそうです。

今回はCOVID-19の病原体の特徴から現在の治療法に至るまで分かりやすく解説していただきました。

寺尾先生、ありがとうございました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 栁

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療