2021.01.15 抄読会

担当:初期研修医飯島先生、川上先生

Subcutaneous Nitroglycerin for Radial Arterial Catheterization in Pediatric Patients
Anesthesiology2020; 133:53-63

乳児の橈骨動脈カニューレーションは技術的に困難な場合があります。
成人患者では、ニトログリセリンが橈骨動脈カニューレーションを促進することがわかっています。
2歳未満の小児において、0.5mlの生理食塩水に5mcg/kgのニトログリセリンを加えて橈骨動脈周囲に浸潤させたところ、動脈カニュレーションの初回成功率が上昇した。

背景: 小児の橈骨動脈カニューレーションは血管が小さいために困難である。 ニトログリセリンは強力な血管拡張剤であり、成人患者では内径を拡大して血管痙攣を防ぐことで橈骨動脈カニューレーションを容易にする。著者らは、ニトログリセリンの皮下注射が小児橈骨動脈カニューレーションの成功率を向上させるという仮説を立てた。

方法:この二重盲検、無作為化、対照、単施設試験では、全身麻酔下で橈骨動脈カニューレーションを必要とする小児患者(n = 113、年齢2歳未満)が登録された。参加者はニトログリセリン群(n = 57)または対照群(n = 56)に無作為に割り付けられた。 全身麻酔を誘導した後、ニトログリセリン溶液(5μg/kg、0.5ml)または通常の生理食塩水(0.5ml)を選択した橈骨動脈の上に超音波誘導で10秒かけて皮下注射した。 その3分後に、超音波誘導橈骨動脈カニューレーションを行った。 橈骨動脈径は皮下注射の前後とカニューレーション後に測定した。 第一次アウトカムは、初回のカニューレーション成功率であった。 第二次アウトカムは橈骨動脈の直径、血腫や血管痙攣を含む全合併症率であった。

結果:合計113人の小児が解析に含まれた。 ニトログリセリン群は対照群よりも初診成功率が高かった(91.2%[57人中52人]対66.1%[56人中37人];P = 0.002;オッズ比、5.3;95%CI、1.83〜15.6;絶対リスク低減、-25.2%;95%CI、-39.6〜-10.7%)。ニトログリセリンの皮下注射は、通常の生理食塩水よりも橈骨動脈の直径を大きくした(25.0±19.5% vs. 1.9±13.1%;平均差の95%CI、16.9〜29.3%;P<0.001)。全体的な合併症率はニトログリセリン群の方が対照群よりも低かった(3.5%[57例中2例] vs. 31.2%[56例中18例];P=0.001;オッズ比、0.07777;95%CI、0.017〜0.350;絶対リスク低減、28.6%;95%CI、15.5〜41.8%)。

結論:橈骨動脈カニューレーションの前にニトログリセリンを皮下注射することで、小児患者の初回成功率が向上し、全体の合併症率が低下した。

実際に自分が研究を行う視点も持ちながら丁寧にわかりやすく発表してくれました!
飯島先生、川上先生有難うございました!

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 荻野仁史

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療