BJA誌:心肺バイパス下心臓手術における酸素化目標 ― 制限的 vs リベラル戦略に臨床転帰の差なし
2026.01.13 麻酔科抄読会サマリー
Wiberg S, Møller CH, Kjaergaard J, et al. Restrictive versus liberal oxygenation in patients undergoing cardiopulmonary bypass-assisted heart surgery: a randomised controlled trial. Br J Anaesth. 2025;135(6):1618–1625. doi:10.1016/j.bja.2025.08.005
<目的>
心肺バイパス(CPB)下心臓手術では十分な酸素供給が重要である一方、過剰酸素(hyperoxia)は酸化ストレスや虚血再灌流障害を介して臓器障害を助長する可能性が指摘されている。本研究は、CPB中および離脱後1時間における制限的酸素投与(FIO2 50%)とリベラル酸素投与(FIO2 100%)が、死亡・脳・腎・心イベントに与える影響を比較検討した。
<PICO>
P:CABG、AVR、または両者を受ける成人患者(n=1389)
I:CPB中および離脱後1時間までFIO2 50%(制限的酸素化)
C:同期間FIO2 100%(リベラル酸素化)
O:主要評価項目:死亡、透析を要する腎不全、脳卒中、新規または増悪心不全の複合エンドポイントまでの時間
副次評価項目:各構成要素、ICU・入院期間、急性腎障害、SSI、再入院など
<結果>
- CPB中PaO2:制限群 19–23 kPa、リベラル群 >60 kPa
- 主要複合エンドポイント:制限群 24% vs リベラル群 24%(HR 1.01, 95%CI 0.81–1.30, p=0.92)
- 死亡率:差なし(追跡期間中央値5.9年)
- 透析導入、脳卒中、心不全:群間差なし
- ICU滞在日数・在院日数:差なし
- 有害事象(AKI, SSI, 出血再手術, 心筋梗塞など):差なし
<会場での議論>
Q. サンプルサイズの計算の元となったデータは何か?
A. 研究が行われた施設の過去のデータに基づいて行われた。
→複合アウトカムに関しては、結果の捉え方に関して注意が必要で、結果を個々に見ていかないといけない。平均して均されてしまっている可能性がある。もう一つの可能性として、有意差が出なかったのではなく、サンプルサイズが不足した検出力不足の可能性があるのではないか。
以前にJAMAで発表された論文(下記)ではnormoxia とhyperoxiaで酸化ストレスをバイオマーカーで比較していた。結果的にバイオマーカーは術中において差が出たものの、臨床的な臓器障害に関しては差がなかった。今回は制限群でもhyperoxiaに分類されるので、差がでなかったのではないか。
Lopez MG, Shotwell MS, Hennessy C, et al. Intraoperative Oxygen Treatment, Oxidative Stress, and Organ Injury Following Cardiac Surgery: A Randomized Clinical Trial. JAMA Surg. 2024;159(10):1106–1116. doi:10.1001/jamasurg.2024.2906
このサイトの監修者
亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔