2023.08.31 麻酔科抄読会

担当:NP林さん/劉先生

Effect of Dexmedetomidine on Posttraumatic Stress Disorder in Patients Undergoing Emergency Trauma Surgery: A Randomized Clinical Trial
Youjia Yu et al.
JAMA Netw Open. 2023 Jun 1;6(6):e2318611. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.18611.

概要
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、外傷を経験した人、特に手術のために入院した人によくみられる。デクスメデトミジンは、条件付恐怖記憶の早期統合および形成を減少または逆転させ、術後PTSDの発生を予防する可能性がある。

目的
緊急手術を受けた外傷患者のPTSDに対する術中および術後の低用量デクスメデトミジン静脈内投与の効果を評価すること。

デザイン
二重盲検無作為化臨床試験は、中国江蘇省の4つの病院センターで緊急手術を受けた外傷患者を対象に、2022年1月22日から10月20日まで、術後1ヵ月の追跡調査とともに実施された。合計477人の参加者がスクリーニングを受けた。オブザーバーは、特に主観的測定については、患者のグループ分けを盲検化した。

介入
デクスメデトミジンまたはプラセボ(通常の生理食塩水)を、麻酔開始から手術終了まで1時間ごとに0.1μg/kgの維持量で投与し、手術後も1~3日目の午後9時から午前7時まで同じ割合で投与した。

主要アウトカムと評価基準
主要転帰は、2群における手術1ヵ月後のPTSD発症率の差とした。この転帰はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(Fifth Edition)のClinician-Administered PTSD Scale(CAPS-5)で評価した。副次的アウトカムは、術後48時間以内と1ヵ月以内の疼痛スコア、術後せん妄、悪心、そう痒症の発生率、主観的睡眠の質、不安、有害事象の発生であった。

結果
合計310例(生理食塩水群154例、デクスメデトミジン群156例)が修正intention-to-treat解析に組み入れられた(平均[SD]年齢、40.2[10.3]歳;男性179例[57.7%])。術後1ヵ月のPTSD発症率は、デクスメデトミジン群が対照群よりも有意に低かった(14.1% vs 24.0%;P = 0.03)。デクスメデトミジン群の参加者は対照群の参加者よりもCAPS-5スコアが有意に低かった(17.3 [5.3] vs 18.9 [6.6]; 平均差、1.65; 95%CI、0.31-2.99; P = 0.02)。潜在的交絡因子を調整したところ、デクスメデトミジン群の患者は対照群の患者よりも術後1ヵ月後にPTSDを発症する可能性が低かった(調整オッズ比、0.51;95%CI、0.27-0.94;P = 0.03)。

結論
このランダム化臨床試験において、術中および術後のデクスメデトミジン投与は、外傷患者のPTSD発生率を低下させた。この試験結果は、緊急外傷手術におけるデクスメデトミジンの使用を支持するものである。

当院の救急外来で活躍されているNPの林さんが麻酔科での研修を終えられました。
論文の題材も急性期医療全体にわたる視点を含んだもので、勉強になりました!
急性期医療を支えるチームとして今後ともよろしくお願いいたします!

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 藤井

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔