Advanced PTEeXAM合格体験記

この度Advanced PTEeXAM(Advanced Perioperative Transesophageal Echocardiography Examination)という、米国心エコー学会が主催する周術期経食道心エコー認定試験に合格しましたので、体験記及び攻略を書かせていただきます。

Advanced PTEeXAMは、周術期に経食道心エコーを扱う麻酔科医を対象にしている試験で、1997年から毎年行われています。それを参考に日本のJBPOTが作られたとの噂もされています。試験内容は網羅的で、JBPOTとほぼ一緒と思っていただければと思います。試験形式はCBTで、6ブロックで、1ブロックあたり54分制限で40問があります。合格率が例年8割以上でJBPOTより易しいとの噂があります。
私は現在亀田総合病院麻酔科後期研修医の3年目です。亀田では心臓症例が豊富で、年間200例にのぼる開心術はもちろん、ステント治療・TAVI・MitraClip・Impella症例もたくさnです。心臓麻酔専門の指導医は何人もいるので、教育的な環境です。後期1年目の後半から指導医を1人つけて開心術の麻酔を担当しはじめるので、スタートが早く、症例への暴露も多いです。今までの2年間で、開心術の担当症例は約70件でした。

TEEの勉強は症例と並行してやりました。最初は指導医と一緒に触ってみることから始まり、勤務終了後に成書で知識の整理をしていました。亀田にはTEEのシミュレーターもありますので、なかなかイメージができない最初の頃は、シミュレーターをよく利用しました。また、亀田の後期プログラムには心エコー検査室でのローテーションがありますので、私の場合はこれからですが、ベテランの検査技師にべったりついて、系統的な心エコー検査そして周術期にできない量的評価の仕方も学べます。
JBPOTは去年11月に受けて運良く合格しました。「JBPOTより簡単だから対策はいらない」、「原理が難しい」と言われたので、JBPOT対策時に取ったノートを見返すぐらいで新たに対策もせずに今回の試験に臨みました。
実際の試験は想像していたのとだいぶ違いました。
去年受けたJBPOTは、試験の質が高くなり画像問題が難化したとはいえ、原理が中心となる文章問題が約1/3ほどでした。画像問題をギリギリで取れれば、あとは知識や座学の内容でどうにかなる原理をメインに勉強すれば通ります。
しかしAdvanced PTEeXAMは違いました。原理問題や文章問題はかなり少なく、2割もないかと体感しています。ほぼ全ての設問は画像問題で、連問もなく1問あたりの画像数・動画数が非常にボリューミーなので、54分間で40問というきつい時間制限の中で回答に迷う暇もありませんでした。その分、英語の文章量が少ないため、英語が苦手な方でも画像問題で十分戦えると思います。
内容はJBPOTよりも臨床的で、臨床をしていれば自然に解けるし、逆に臨床経験が少ない方だと落とされやすいです。私の点数も、素直に自分の臨床経験を反映しているのではないかと思います。

試験の申し込みに大きな落とし穴が存在しています。試験日は毎年の夏で、開始時期は2月でした。申し込みの書類として、「A valid (unexpired) license to practice medicine with expiration date」が必要で、もし「your license does not contain an expiration date」であれば、①「An original letter from the Medical Council stating your license is permanent」もしくは②「An original certificate of good standing dated no more than 12 months prior to date application received」が必要になります。①の入手は難しく、②であれば厚生労働省に行政処分関係英文証明を取り寄せて提出すれば問題ありませんが、発行するには1ヶ月以上かかりましたので早めに準備することをおすすめします。
また、申込みができたとしても試験の予約も難しいです。実際の試験はPearsonというテストセンターで受けますので、東京に2ヶ所、大阪に1ヶ所あります。3月に申し込み承認が降りた当日にすぐに予約を試みましたが、なんとどこも埋まっており、予約が取れませんでした。周辺の国を探すとフィリピンに枠が残っていたのですぐに確保した上で、最悪フィリピンで受けられるよう、上司に相談して休みの確保をしました。しかし「せっかくフィリピンに行っても試験だしなー」と悔しくなってきたため、ダメ元で東京のテストセンターに電話して、事情を説明すると翌日に一枠を開放してくださったおかげで、なんとか日本で試験を受けられました。まだ枠が開放されていなかった可能性もありますが、受ける予定の方々も気をつけてください。

私はこの試験に合格できたのは自分の努力だけではなく、学びの環境を提供してくださった亀田麻酔科のサポートのおかげだと思います。この試験の合格をもって、ようやくスタートラインに立った気分で、日々の臨床現場・教育現場へ還元をしながら、さらに学んでいきたいと思います。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 金

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔