2023.05.16 麻酔科抄読会

担当:劉先生

Continued enteral nutrition until extubation compared with fasting before extubation in patients in the intensive care unit: an open-label, cluster-randomised, parallel-group, non-inferiority trial
THE LANCET Respiratory Medicine VOLUME 11, ISSUE 4, P319-328, APRIL 2023

【背景】
ICUにおける経腸栄養を行われている挿管患者では慣習的に抜管前に誤嚥予防目的で絶食管理が行われることが多い。しかし、抜管前の絶食の有効性に関する検証は行われておらず、むしろ絶食管理を行うことは挿管時間の延長や呼吸負荷の増加、カロリー摂取量の減少などに繋がりうる。
本研究ではIC Uの挿管患者において、抜管6時間前からの絶食とする管理を行う群と抜管直前まで栄養を継続する管理を行う群の抜管成功率を比較した非劣性試験。

【概要】
2018年4月1日~2019年10月31日の期間にフランスにある22施設のICUで施行されたオープンラベル・クラスター無作為化・並行群間・非劣性試験。
対象患者はICU入室中の18歳以上で48時間以上の挿管人工呼吸管理を受けている患者を対象とした。
主要評価項目:抜管失敗(抜管後7日以内の再挿管+死亡)
副次評価項目:高血糖・低血糖・肺炎・SBTから抜管までの時間・ICU入室期間・ICU死亡率・カロリー摂取率・誤嚥性肺炎など

【結論】
4198人が適格基準を満たし、そのうち1130人の患者が登録され、intention-to-treat群に含まれ、1008人がper-protocol群に含まれた。
主要評価項目である抜管失敗に関して、intention-to-treat群では、栄養継続群で617例中106例(17-2%)、絶食群で513例中90例(17-5%)で発生し、事前に定義した非劣性基準を満たした(絶対差-0-4%、95%CI -5-2~4-5).
per-protocol群においては、栄養継続群では595例中101例(17-0%)、絶食群では413例中74例(17-9%)で発生した(絶対差-0-9%、95%CI-5-6~3-7)。
副次評価項目である抜管後14日以内の肺炎は、栄養継続群では10例(1~6%)、絶食群では13例(2~5%)に発生した(率比0~77、95%CI 0~22~2~69)。

【解釈】
集中治療室の重症患者において、抜管まで経腸栄養を継続することは、主要評価項目である抜管失敗(抜管7日以内の再挿管+死亡)の点で、従来行われている抜管前6時間絶食管理と比較しても非劣性であるという結果であった。
今回はICUで挿管人工呼吸器管理中の経腸栄養を行われている患者さんの抜管前の栄養を継続するかどうかに関して検討した非劣性試験に関してでした。
ICU専門医でもある劉先生による発表で、経腸栄養と経静脈栄養のメリット・デメリットなど周辺知識にも触れた発表内容で大変勉強になりました。
普段の臨床では挿管前の絶飲食時間は気にすることが多いですが、抜管前の絶飲食に関して考えさせられる良い機会となりました。

サマリー作成 麻酔科専攻医 2年目 竹下

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔