University of California Irvine見学体験記

昨年当院に学生実習に来てくれて、その後日本麻酔科学会の年次集会で最優秀演題賞を獲得した筑波大学6年生の根本さんが、当院の植田の紹介で海外での実習を経験し、その体験記を送ってくれました!


春休みの期間を使って1週間、University of California Irvine の富樫先生のもとでCVICUの見学をさせていただきました。国試の期間を経て実習からはだいぶ離れていたし、初めての海外実習でとても緊張しておりましたが、チームの皆さんに温かく迎え入れてもらい、とても充実した1週間を過ごすことができました。

富樫先生は循環器ICU(CVICU)の責任者で、CVICUは12時間ごとの朝チームと夜チームに分かれていました。メンバーはレジデント1人、フェロー2人、医学生1人(+私)、NP2人。そこにアテンディングの富樫先生を加えて8人構成でした。
富樫先生は回診中にフェロー・レジデント・学生にいろいろ質問をしており、回診中のディスカッションがとても活発でした。患者の病態に絡めて、試験で聞かれそうな大切なところを重点的にディスカッションし、分からなければベッドサイドで実例を見せながら教えてくれていたのが印象的でした。レジデントの部屋では、富樫先生は一見厳しそうだがとても教育的でいい先生で、一緒に働くと医者として成長させてくれると皆口を揃えて言っていました。

日本とのシステムの違いという点では職種の細分化とコンサルテーションの多さが印象的でした。

CVICUではNurse practitioner、Respiratory therapist、Perfusionist など、日本ではあまり馴染みのない職種の人たちがおり、人工呼吸器の管理や人工心肺の管理に携わっていました。NP(nurse practitioner、 registered nurse)はレジデントと同じような立場の職種で、オーダーを入れる、患者家族への連絡、処置の準備などの仕事をしていました。レジデント、フェロー、医学生は同じような立場で、(もちろんフェローはレジデントより知識と経験があるし、レジデントは医学生よりも知識と経験がありますが)アテンディングになることを目標に共に頑張る同志のように助け合っており、その科の専門家か否かということが非常に重視されているのだと感じました。

またコンサルテーションが非常に多いのも印象的でした。訴訟大国なので、何かあった時のために専門家に相談しておく必要があるんだよ、とNPのひとりが教えてくれました。医学生であれば訴えられることはまずないそうですが、レジデントになれば訴状に名前を上げられること決して珍しいことではないそうです。多くの人が経験することなのでそこまで気にすることではないらしいが、やはり気分のいいものではなさそうでした。

仕事も細分化されていて、たとえば循環器の術後に脳出血を起こしたICUの患者に気切が必要となった場合、管理するのはCVICU、気切をするのは呼吸器、その前に脳外科(あるいは神経ICU)、循環器の先生にコンサルして、気切しても大丈夫かどうか確認してから気切をするという手順を踏んでいました。これにとても時間がかかるし、コンサル自体も当日にできるかは分からず、月曜日に気切の方針を決めて、実際に気切が行われたのは木曜日でした。それでも早いほうなのだそうです。専門を極めるという点ではとても良いのかもしれないが、患者への処置の迅速さという点ではやや難があるように思えました。

働き方という面ではCVICUはチームでの12時間のシフト制で朝6:30~夕方18:30の昼勤と夕方18:30~朝6:30までの夜勤があり、時間になったら交代です。アテンディングは週替わり、朝夕で交代です。チームのメンバーはとても生き生き仕事をしていました。もちろん疲れた、どこの科の誰が…のような愚痴は山ほど出てきますが、それでも12時間で帰れるというゴールが見えているのは精神衛生上よいのかもしれません。

富樫先生、1週間ありがとうございました。慣れない事ばかりでいろいろとお手間をおかけしましたが、とても楽しかったです。海外実習の受け入れ先を探すにあたっては亀田総合病院の植田健一先生には大変お世話になりました。ありがとうございました。

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療