祝、JB-POT合格!2名の合格体験記
2021年のJB-POTに当院後期研修医である藤井先生と本記事執筆者荻野の2名が挑戦し、2名とも合格いたしました!今回はその体験記を掲載いたします!
1.JB-POT合格体験記
麻酔科専攻医の藤井真理映と申します。この度2021年度日本周術期経食道心エコー認定試験(JB-POT)に合格しましたので、僭越ながら合格体験記を書かせていただきます。
私は卒後7年目(麻酔科4年目)で、今年春に第1子を出産し、現在産休育休合わせて1年間休職しています。実際に育児が始まってみると日々可愛い我が子と密に過ごせる時間を尊く感じる一方で、コロナ禍に家事と育児のみで一日が終わっていくことにもどかしさを感じるところもあり、この限られた時間を自分のスキルアップの機会にもしたいという気持ちからJB-POT受験を決めました。
JB-POTは動画問題と文章問題の2パートに分かれており、合格基準として動画問題60%以上かつ動画問題 + 文章問題の全体で60%以上の正答率を得ることとされています。過去問が存在しないため、どう勉強すべきか悩んでしまいがちですが、当院麻酔科にはJB-POT取得者が多くいらっしゃり、対策についてのアドバイスは十分に得られる環境でしたので、過去に合格している先輩方からJB-POT対策に良いと聞いていた教科書や問題集を準備した上、春・夏のTEE講習会に申込み、8月頭に試験に応募しました。
試験勉強は毎日少しでも教科書や問題集に触れることを目標に、8月頭から始めていきました。日中は意外とまとまった時間を確保することが難しく、主に勉強は子供を寝かしつけた後の夜20時以降に行うようにしていました。以下に具体的な勉強方法を述べていきたいと思います。
初めにホームページに公開されている出題内容のアウトラインを確認すると、超音波の原理が占める割合の多いことがわかります。勉強を始めるにあたって、個人的に原理が最も取り組みにくく感じたので、初めはキャノンメディカルシステムズが提供している「Dr.SONOの公開講座」(ネット上で無料で視聴可能)を利用し原理の基本を知るところから始めました。また同時に『周術期経食道心エコー図 効率的に学ぶために』(通称赤本)を解き進めながら、『初心者から研修医のための経食道心エコーII』(通称緑本)を通読し、わからない箇所は『周術期経食道心エコー実践法 第2版』(通称紫本)を参照していきました。
原理の章が終わると、徐々に馴染みのあるテーマとなっていき楽しみながら勉強することができたと思います。また赤本を解きすすめるのと並行して、春・夏のTEE講習会の動画も見進めていきました。特に当院麻酔科での業務ではあまり馴染みのないImpellaやLVAD等のデバイス挿入時のTEEや先天性心疾患については、講習会の動画は非常に勉強になりました。
文章問題の対策として最終的には緑本と紫本の通読、赤本を3周と紫本の章末問題2周を解きました。
動画問題の対策は、日本心臓血管麻酔学会の会員が利用できるEcho Roundsという動画問題を集めたサイトと、正常画像を理解する為に「TEE Standard Views」という2D画像と3D画像が連動して確認できるアプリが役立ちました。巷では動画問題対策に用いられている問題集などもあるようですが、私は時間が足りないと感じたため手はつけずに、TEE講習会のレクチャーを多く見るようにしました。もちろん今までの心臓麻酔中のTEE経験も、とても役立ちました。
あとは日本心臓血管麻酔学会が毎年行っているJB-POT直前講習から例年かなり出題されると聞いており、実際に私も受講しましたが、今回も直前講習から広範囲の内容が試験に出題され、直前講習を視聴したことで大きく合格に近づいたように思います。
試験が終わった感想として、普段の臨床判断を問う問題が多かったと感じ、出題者側が机上で得られる知識以上に、実臨床でどのように考え対処するかを重要視している印象を受けました。そのため、教科書や問題集で勉強することももちろん大切だと思いますが、やはり日々の心臓麻酔症例に一つ一つ丁寧に向き合うことが大事だと感じました。
動画問題も文章問題も思っていた以上に難しく、試験終了後は合格の確信を持てないまま不安な気持ちで帰路についたことを覚えていますが、1ヶ月後には無事に合格通知を受け取ることができました。今回育休中の受験でしたので、日々業務をこなしながら勉強を行う先生に比べたらまた条件が異なるかも知れませんが、少しでも今後JB-POT受験を考えている方の参考になれば幸いです。お読みいただき、どうも有難うございました。
亀田総合病院 麻酔科専攻医 藤井真理映
2.JB-POT 合格体験記
こんにちは。後期研修医2年目で、亀田総合病院麻酔科のSNSでよく記事を書かせていただいております、荻野仁史と申します。
合格体験記ということでお題を頂きました。今回は1番有効と考えられる対策のみ記させていただき、具体的な個別の対策法などはまた別の亀田経食道エコーセミナー(仮)などでお話する機会があればと思います。
本題に入る前に亀田総合病院を簡単に紹介させていただきます。当院麻酔科は後期研修医1年目〜2年目に開心術の麻酔を担当するようになります。他の研修病院からすると早い様に感じますが、植田部長をはじめとする経験豊富な先生方と共に、初めは麻酔管理に専念し、その後に少しずつ経食道エコーを実際に触りながら、全体を1人で出来る様に教えていただけます。亀田総合病院には経食道心エコーのシミュレーターもあり、そこで十分なシミュレーションを積むこともできます。
また、当院の心臓血管外科医は皆さん紳士的な先生方で、拙い麻酔管理や経食道エコーのナビゲーションにも拘わらず、真摯に麻酔担当医の話を聞いてくださいます。よく『麻酔科医は外科医に育てられる。』と言われますが、特に心臓麻酔をしてる際は、目の前に良き指導者がいるとさえ感じます。さらに、人工心肺を扱う臨床工学技士の方々、看護師の方々、皆さん目の前の患者様が少しでも良くなればと、一所懸命に治療にあたっています。患者様が無事に手術を終えた際には「お疲れ様です」とお互いを労える素晴らしい手術部だと思います。
このような恵まれた環境の中、麻酔科上級医、心臓血管外科医をはじめとする、指導してくださる方々と患者様への感謝の気持ちを忘れず、謙虚な姿勢で心臓血管麻酔管理を行っていくことが、JB-POTの直接的な対策へ繋がると私は考えます。
経食道心エコーは、現在、手術中の大きな決定の根拠となり得るツールにまで発展してきています。そして今後も技術の進化と共にその役割は大きなものになってきます。そんな中で、基礎となるJB-POTの動画問題は臨床に即した問題が多く出題されています。これは上記のようにきちんと学べる環境の中で、いただいたフィードバックに基づき、ポイントとなる所見や起こりうる合併症、カテーテル類の描出などを丁寧におこなっていくこと、更に余裕ができたらその他の所見も同時に取得して吟味してみる事といった積み重ねが、動画問題の本質的且つ有効な対策になると思われます。JB-POTは動画問題が6割以上かつ全体で6割以上で合格できますので、対策の方向性としては王道だと思います。
以上の拙文を私の合格体験記として終わらせていただきます。
亀田総合病院 麻酔科後期研修医 荻野仁史
このサイトの監修者
亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収
【専門分野】
麻酔、集中治療