集中治療専門医受験記

亀田総合病院麻酔科の劉 丹です。このたび集中治療専門医に合格することができましたので、体験記を書かせてもらいました。後期研修医から今までの働き方や、専門医試験にむけて対策したことをまとめてみましたので、少しでも麻酔と集中治療どちらか興味がある方の参考になれば幸いです。

私は岡山大学麻酔蘇生科に所属しています。麻酔科1年目春に教授にいわれたのは、「一流の麻酔科医になりなさい」ということでした。それは、具体的には3つありましたが、最初の条件が「麻酔専門医以外のサブスペシャリティを必ず持って専門医をとること」でした。当時私は麻酔科を志望したのが遅かったこともあり、同期8人の中でも1番仕事に慣れるのが遅く、何を聞いても自信がなさそうと心配されていたおちこぼれちゃんだったのです。その中でICU専門医かぁ・・・途方もない夢だな、と思っていました。しかし、医局の先輩方は麻酔も集中治療も完璧にこなして日々業務に追われて忙しい中で当直の合間を縫って丁寧に優しくICUのこともたくさん教えてくださり、少しずつICU業務が好きになり積極的にICUに行くようになりました。

その後転勤して数年間は国立がん研究センター麻酔・集中治療科で後期研修医として働きました。そこで麻酔もICU業務も研究発表や論文執筆もご指導いただきました。部長や指導医の先生方には、ICU業務として集中治療が必要とされる疾患の病態や治療や癌術後の周術期管理に加えて、さらに集中治療が必要な重症患者が癌を患っているという難しい分野においての治療方針の考え方についても何度も何度も教えていただきました。ICUに入らなければならない急性期治療はもちろん、個々の患者本人の状態や家族の理解や接し方・各科主治医の考え方、さまざまな側面から総合的に治療方針やゴールをみつめ、その中での通過点であるICUでできる目標設定を常に考えるようになれたのはかけがえのない経験でした。ICUで数週間かけて治療を行ったのちに病棟に退室できた患者様が、数か月後ICUまでわざわざ歩いてきてくれ、笑顔で退院の挨拶しにきてくださった時の喜びは決して忘れられません。

その後、亀田総合病院に異動になり、現在は麻酔科医として働いています。部長はじめ指導医の先生方は麻酔だけでなくICU従事されていた方も多くいて、みんなでICU勤務を経て学んだ周術期管理をできるだけ後輩に伝わるように指導しつつ一緒に勉強しています。また、当院は単独の集中治療科があり、指導医だけでなく同世代の医師も多く、見て聞いて学んでさらに刺激を受けることができました。

試験対策について少しだけ触れておきます。試験受験資格は、1.なにか専門医をもっている 2.ICU研修病院で必要な従事期間と専従期間と経験症例 3.集中治療学会の参加と発表 4.論文執筆などがあります。それらの書類申請をパスすると、次に試験が受けられます。試験は臨床に沿った症例問題が増え、とても難しかったです。過去問と回答が公表されていますが、実際にみたとき、ICUでかかわるべき疾患範囲の広さに改めて愕然としました。それと同時に、自分の勉強不足を痛感し、これからも常に周術期管理メインでより繊細で的確な臨床力をもって医療に真摯に携わりたいと志を新たに頑張りたいと思いました。また、ぜひ麻酔科もかかわる分野が多くあるので、この経験を生かして後輩にも共有し、当院から麻酔科医や集中治療医がふえたら幸せです。

初期研修の時に「肺炎や感染症っておもしろい!急性期みるの好き!大人もこどもも、みんな助けたい!」というまっすぐな初々しい気持ちから始まり、まちがった方向に育たないようにたくさんの方に優しく見守られつづけて今までがむしゃらに頑張った結果、9年目の秋にしてひと段落した記念として、私の受験記とさせていただきます。

今までご指導いただき応援してくださった先生やコメディカルの方々の支えなしには、私は集中治療専門医になることはできなかったです。本当に心から感謝してもしつくせません。これから少しでも恩返ししていきたいと思いますので、みんなで麻酔・集中治療を頑張って盛り上げていきましょう!

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療