2021.10.28 麻酔科抄読会

担当:初期研修医 柏木淳史先生  指導医 植田健一先生

Optimisation of airway management strategies: a prospective before-and-after study on events related to airway management
Tina H. Pedersen1, et al.British Journal of Anaesthesia.2021,127(5):798-806

今日は気道管理戦略の前向き介入研究についての論文紹介でした。
麻酔に関連する合併症は気道管理の問題に関与していることが多く、この前向き介入研究は一般的な気道管理に関連した有害事象の発生率を減少させるために実施が容易な介入に焦点を当てて、気道管理に関連したイベント(Major & Minor)が発生した割合を調べて、気道管理の戦略に的を絞って変更することで気道関連のイベントの発生率を低減できるかどうかを調査するというのが目的でした。

気道戦略の変更点として、(i)意識消失直後のマスク換気前に神経筋遮断薬を投与する。(ii)麻酔導入前にマスクフィットによる酸素投与に加え、鼻カニューレによる低流量酸素投与を施行。(iii)気道安全チェックリストを作成。(iv)気道確保に2回失敗した場合は上級医に交代する。(v)挿管時には可能な限りビデオ喉頭鏡を使用する、などが挙げられ、結果的に定義したMajor事象はBaselineで予定外のICU入室が1件あったのみで、Minor事象はbaselineで延べ918件、follow-upで延べ649件と有意な減少を認めた。イベント症例数はbaselineでの566人(15.4%)からfollow-upでは433人(11.4%)と減らすことができた。(P<0.01,RR=0.74,95%Cl 0.66-0.83)。よって、気道管理における一連の介入をすることで、気道管理における有害事象を減らすことができるという結論に至った。

この研究で行われていた介入内容は決して難解なものではなく、簡易なものであり研修医でも実践できるというのは印象的で、こうした実施が容易な介入で小さな問題の積み重ねで起こる医療の質の低下の改善にも繋がる可能性があると思われる。
日頃の臨床現場にも応用し、合併症のない麻酔をかけていきたいと思います。
柏木先生、植田先生、ありがとうございました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 マイマイティリ イマム

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療